重種,雌,胎齢約9カ月,死亡例(流産).2008年1月24日にカナダから肉用繁殖馬88頭が輸入された.到着時から検疫期間を延長した2月27日の間に流産胎子7頭,新生子馬2頭の死亡があった.当該流産胎子の母馬では臨床症状や血液所見の異常は認められなかった. 剖検では,赤色の胸水及び腹水が多量に貯留していた.肺は間質が水腫性に解離し,肝臓はやや腫大し混濁していた.脾臓は水腫で割面は濾胞の腫大が認められた. 組織学的に,脾臓(提出標本)の白脾髄のリンパ球の減少と壊死が認められ,白脾髄周囲にマクロファージが浸潤していた(図45).マクロファージ及び細網細胞にハローを有する好酸性核内封入体が認められた.肝臓,肺,胸腺及び膵臓等に巣状壊死や炎症細胞の浸潤があり,炎症細胞及び各臓器の実質細胞に核内封入体が確認された.マウス抗馬ヘルペルウイルス1型(EHV-1)モノクローナル抗体(動物衛生研究所)を用いた免疫染色では,おもに封入体が確認された細胞に陽性反応が認められた.透過型電子顕微鏡観察では,肝細胞の核内に直径約100nmのヘルペスウイルス様粒子が認められた. 病原検索では,MDBK細胞を用いて脾臓,肺,肝臓及び胸腺からEHV-1が分離された.これらの臓器及び胸水,腹水でEHV-1のPCR検査が陽性であった. 以上の結果から,本症例はEHV-1による流産と診断された. |
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