6 豚の脊髄白質及び小脳髄体の空胞形成と髄鞘低形成 〔平澤康伸(滋賀県)〕

 LWD,雌,1日齢,鑑定殺.県内一貫養豚場において,2009年11月から,数腹の初産産子生後0から1日齢で後躯の振戦がみられた.経産豚産子では同様の症状は認められなかった.症状は30日齢前後で回復するものもあったが,発育遅延を示した個体では斃死するものが散見された.同年11月16日分娩の初産1腹8頭中6頭が発症したため,うち1頭を鑑定殺した.

 剖検では,主要臓器,脳,脊髄いずれにも著変は認められなかった.

 組織学的には,脊髄では白質の狭小化が顕著に認められ,同部位では髄鞘形成不全を示す微小空胞が全体に認められた(図6)が炎症反応はみられなかった.灰白質の神経細胞などに異常は認められなかった.小脳髄体においても空胞が散見された.大脳にはこのような変化はみられず,その他臓器でも著変は認められなかった.

 細菌学的検査では,主要臓器から細菌は分離されなかった.CPK細胞によってウイルスは分離されず,PRRS,日本脳炎,オーエスキー病,豚パルボの各ウイルスに関するPCR検査でこれらのウイルス遺伝子は検出されなかった.

 本症例は,先天性痙攣症(ダンス病)と診断されたが,その原因は不明であった.

豚の脊髄白質及び小脳髄体の空胞形成と髄鞘低形成