16 豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)にみられた間脳の多核巨細胞を伴う非化膿性脳炎 〔鈴田史子(長崎県)〕

 交雑種,116日齢,去勢,肉用,斃死例.母豚92頭飼養の一貫経営農場において,2010年9月に,発育良好な肥育豚1頭が急死した.斃死時,当該豚の臀部と四肢に赤紫斑が認められた.

 剖検では,体表及び腸間膜リンパ節の腫大,肺水腫,腎臓の点状出血が認められた.

 組織学的には,間脳で単核細胞主体の囲管性細胞浸潤,グリア細胞集簇が散見された.時に,多核巨細胞とその周囲にグリア細胞の集簇像が認められた.同様の病変は中脳,橋(図16),延髄でも認められたが,大脳に多核巨細胞は認められなかった.その他,線維素性糸球体腎炎,出血性壊死性皮膚炎,リンパ系組織におけるリンパ球減数と肉芽腫性病変が認められた.大脳,小脳,脳幹部,腎臓,肺,鼠径リンパ節,回腸と付属リンパ節について抗豚サーコウイルス2型(PCV2)家兎血清(動衛研)を用いて免疫組織化学的染色(IHC)を実施したところ,回腸と付属リンパ節で陽性反応が認められた.また,脳幹部についてMAC387抗体(DAKO)及び抗GFAP抗体(Biomedical Technologies Inc.)を用いてIHCを実施したところ,多核巨細胞はMAC387抗体で弱陽性〜陰性を示した.多核巨細胞周囲にはMAC387抗体で陽性を示したマクロファージとGFAP抗体で陽性を示したグリア細胞が集簇していた.

 病原検索では,主要臓器から病原細菌は分離されなかった.

 以上の成績から,本症例はPCVAD(病型:豚皮膚炎腎症症候群)と診断された.

豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)にみられた間脳の多核巨細胞を伴う非化膿性脳炎