18 牛のグラム陰性桿菌を中心としたSplendore-Hoeppli現象を伴う化膿性肉芽腫性鼻炎 〔東 智子(島根県)〕

 黒毛和種,雌,74カ月齢,鑑定殺.2010年11月頃より鼻出血及び鼻腔狭窄がみられ,鼻腔内に直径5mmに至る黄白色結節性病変が複数確認された.抗生物質等により治療するも回復せず,5カ月後に病畜と殺された.

 剖検では,鼻粘膜における上記外貌所見に加え,鼻粘膜の肥厚,び爛及び出血がみられた.口腔粘膜,胸腔及び腹腔臓器に著変はみられなかった.

 組織学的には,鼻粘膜の粘膜固有層から粘膜下組織にかけて多発性の化膿性肉芽腫病変,粘膜固有層の海綿体静脈のうっ血及び表皮側真皮における軽度の好中球浸潤がみられた.化膿性肉芽腫性病変の中心部にはグラム陰性菌塊を中心にSplendore-Hoeppli現象(ロゼット:花弁状棍棒体)が認められ(図18),抗 Actinobacillus lignieresii 家兎多価血清(動衛研)を用いた免疫組織化学的染色によりSplendore-Hoeppli現象内のグラム陰性菌塊に一致して陽性反応がみられた.

 電子顕微鏡検索により,Splendore-Hoeppli現象は電子密度の高い物質塊として認められ,内部に明瞭な菌体構造はみられなかったものの,ロゼット構造周囲の好中球内に菌体が散見された.菌は,長楕円形から球形までさまざまな形態がみられ,長さは400nmから1μm.時に桿菌と球菌が並んでみられるアクチノバチルス属菌の特徴的形態が観察された.

 ホルマリン固定臓器から抽出した16S rRNAの遺伝子解析により, Burkholderia cenocepacia の特異遺伝子が検出されたが,本病態への関与は不明であった.

 以上の成績から本症例は,牛のアクチノバチルス症を疑うと診断された.

牛のグラム陰性桿菌を中心としたSplendore?Hoeppli現象を伴う化膿性肉芽腫性鼻炎