2 鶏の視葉にみられた Pasteurella multocida による線維素化膿性髄膜炎 〔熊谷芳浩(岩手県)〕

 チャンキー種,雄,46日齢,鑑定殺.2010年11月20日に,肉用鶏場(15鶏舎)の1鶏舎で飼養する7,293羽のうち,40羽が斃死し,50羽が病鶏として淘汰された.病鶏には斜頸が共通所見として観察され,その他に,下痢,顔面・眼瞼浮腫,呼吸器症状及び脚弱が確認された.死廃率は出荷までに1.1〜2.4%/日で推移し,最終的には18%となった.

 剖検では,眼瞼部を中心として,頭頸部皮下に線維素析出を伴う水腫が認められ,頭蓋骨腔内にチーズ様物が貯留していた.肝臓では針尖大白色病巣が散見された.また,気嚢と肺漿膜に線維素の付着が認められた.

 組織学的に,視葉を中心とする領域の髄膜に線維素析出,偽好酸球,リンパ球及び形質細胞の浸潤による肥厚が認められた(図2).中耳を含む頭蓋骨腔内に,線維素を伴う多数の偽好酸球浸潤が認められた.抗 Pasteurella multocida 家兎血清(動衛研)を用いた免疫組織化学的染色では,髄膜と頭蓋骨腔内の病変部に一致して陽性抗原が認められた.その他,肝臓に血栓形成を伴う多発性凝固壊死巣が観察された.

 病原検索では,主要臓器及び大脳から P. multocida (莢膜抗原A型)が分離された.鳥インフルエンザ,ニューカッスル病ウイルスは分離されなかった.

 以上から,本症例は鶏パスツレラ症と診断された.

鶏の視葉にみられたPasteurella multocidaによる線維素化膿性髄膜炎