20 牛の Mycoplasma bovis 及び Fusobacterium necrophorum による壊死性線維素性気管支胸膜肺炎 〔福田雅史(動物検疫所)〕

 アンガスクロス種,雌,8〜12カ月齢,斃死例.2011年春にオーストラリアより輸入され,左前肢の腫脹及び起立嫌悪を呈した後,検疫5日目に斃死した.

 剖検では,胸腔における線維素の析出が顕著であり,胸壁と心外膜の癒着も認められた.また,胸水の増量,右肺前葉から中葉にかけての乾酪化膿瘍形成,左肺の肝変化も認められた.その他,左前肢の皮下膿瘍及び右腰角の黒色腫瘤も認められた.

 組織学的に,肺では,多発巣状から癒合性に凝固壊死が散在しており(図20),壊死巣内では,グラム陽性及び陰性の球菌から短桿菌の細菌塊,炎症細胞などの細胞退廃物,線維素が認められ,壊死巣周囲では好中球を主体とする炎症細胞が浸潤していた.その他の領域では肺胞壁は充血し,肺胞腔に,好中球,マクロファージ,多核巨細胞,線維素及び細菌塊などが充満しており出血もみられた.また,気管支や細気管支の粘膜上皮細胞は壊死,脱落し,炎症細胞の細胞退廃物や細菌塊,線維素が充満していた.小葉間においても水腫と線維素の析出が顕著に認められた(図20).抗 Mycoplasma bovis 抗体,抗 Fusobacterium necrophorum 抗体,抗 Arcanobacterium pyogenes 抗体,抗 Histophilus somni 抗体(いずれも動衛研)を用いた免疫組織化学的染色では,肺の壊死巣や細菌塊に一致してすべて陽性反応が認められ,特に M. bovis 及び F. necrophorum において,強い陽性反応が認められた.この他,右腰角の黒色腫瘤部では M. bovis 及び F. necrophorum の感染による肉芽腫が認められた.

 細菌学的検査では,肺から, M. bovisF. necrophorumA. pyogenes 及び H. somni が分離された.

 以上の結果から,本症例は牛の F. necrophorum 感染を伴うマイコプラズマ感染症と診断された.

牛のMycoplasma bovis及びFusobacterium necrophorumによる壊死性線維素性気管支胸膜肺炎