26  Lichtheimia corymbifera 感染による牛の脳梗塞,化膿性肉芽腫性脳炎 〔藤田敦子(広島県)〕

 黒毛和種,雄,4日齢,鑑定殺.2010年9月に胎齢266日で生まれた子牛が,出生時から起立不能,左側斜頸及び盲目を呈したため,病性鑑定を実施した.

 剖検では,右大脳に淡桃色の広範な軟化巣があった.左眼の角膜及び眼房水は白濁していた.

 組織学的には,右大脳全域の髄質から一部皮質,間脳及び中脳にわたる広範な壊死が認められた.壊死巣中心部は疎鬆化し,充血,石灰沈着,血栓形成,血管壁の変性及び血管炎があった.壊死巣辺縁部には,変性した炎症性細胞が集簇し,その周囲には類上皮細胞が浸潤し,好中球の集簇巣を多核巨細胞が包囲した小さな肉芽腫を形成していた(図26).壊死巣や肉芽腫中心部には,PAS反応及びグロコット染色に陽性の隔壁がない菌糸が散在し,一部では菌糸が血管壁や血管内に侵入していた.壊死巣の外層周囲には,リンパ球を主体とする単核細胞の囲管性細胞浸潤が顕著に観察された.左眼球角膜では,上皮が剥離し,軽度の細菌増殖及び好中球浸潤を伴い水腫性に肥厚していた.

 病原検査では,接合菌の特徴を示した真菌が大脳から2.0×10cfu/ml分離され,遺伝子解析の結果 Lichtheimia corymbifera (旧 Absidia corymbifera )遺伝子と100%の相同性を示した.

 以上の結果から,本症例は L. corymbifera による牛の真菌性脳炎(脳接合菌症)と診断された.真菌の脳への侵入経路は明らかにされなかったものの,本症例は胎内感染が疑われ,まれな症例と考えられた.

Lichtheimia corymbifera感染による牛の脳梗塞,化膿性肉芽腫性脳炎