29 牛の Listeria monocytogenes による壊死性空腸炎 〔篠川有理(新潟県)〕

 ホルスタイン種,雌,41カ月齢,鑑定殺.2010年7月6日に発熱,食欲廃絶,削痩を呈し獣医師の診療を受けた.7月8日に解熱したが,下痢,泌乳停止を認め,血液検査結果から腎不全と診断され,15日に病性鑑定に供された.

 剖検では,空腸下部粘膜の肥厚と暗赤色化,及び腸間膜リンパ節の腫大と乾酪壊死を認めた.回腸粘膜も暗赤色を呈していた.

 組織学的には,空腸下部粘膜の壊死,充うっ血,潰瘍,粘膜固有層から粘膜下組織にかけて単核細胞の浸潤,筋層及び漿膜の血管周囲に単核細胞の浸潤を認め(図29),漿膜に血管炎が散見された.腸間膜リンパ節と脾臓にグラム陽性桿菌の集塊を含む壊死が認められた.抗 Listeria monocytogenes 家兎血清(新潟県)を用いた免疫組織化学的染色では,空腸下部の粘膜固有層から粘膜下組織にかけて浸潤したマクロファージの細胞質内に陽性反応を認め,腸間膜リンパ節及び脾臓の細菌塊にも陽性反応が一致して認められた.

 病原検索では,腎臓と腸間膜リンパ節から L. monocytogenes が分離され,空腸から牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)が分離された.BVDVの遺伝子検索は陰性,中和抗体価は32倍であった.

 以上の所見から,本症例はリステリア症と診断された.病変が空腸下部と腸間膜リンパ節,脾臓に限局していることから敗血症型ではないと判断された.また,BVDVによる特徴所見は認められず,当該牛へのBVDV感染の影響は少ないと考えられた.

牛のListeria monocytogenesによる壊死性空腸炎