30 繁殖和牛にみられた日本脳炎ウイルスによる非化膿性脳炎 〔加古奈緒美(愛知県)〕

 黒毛和種,雌,9歳6カ月齢,鑑定殺.和牛繁殖農場で2010年9月14日に発熱,食欲不振の認められた母牛1頭が抗生物質等で加療しても回復せず,起立不能,横臥状態となったことから9月22日に鑑定殺した.当該農場では,イバラキ病,異常産3種混合,呼吸器病5種混合ワクチンが接種されていた.同居牛に異常は認められなかった.

 剖検では,脳のうっ血,右大腿部の創傷,体表リンパ節の腫脹などが認められた.

 組織学的には,非化膿性髄膜脳脊髄炎が特徴であった.大脳皮質では神経細胞の壊死が多発し,神経食現象(図30B)が散見され,グリア細胞が増殖していた.病変は海馬で高度で,錐体細胞のほとんどが変性,壊死に陥り,グリア細胞がび漫性に重度に増殖していた.大脳全域で,リンパ球を主体とする血管周囲性の細胞浸潤(図30A)が多発し,軽度の髄膜炎も認められた.白質では,神経細胞の壊死に付随して生じたと考えられる空胞変性が認められた.抗日本脳炎ウイルス抗体(AS-6株,動衛研)を用いた免疫組織化学染色では,神経細胞の細胞質及び神経突起に陽性反応が認められた.

 病原検索では,大脳乳剤から日本脳炎ウイルスが分離されるとともに,血清学的検査ではHI抗体及び中和抗体の保有が認められた.主要臓器から病原細菌は分離されず,BSE-ELISA検査は陰性だった.

 以上から,本症例は繁殖和牛の日本脳炎と診断された.

繁殖和牛にみられた日本脳炎ウイルスによる非化膿性脳炎