31 牛の大脳にみられたグリオーシスを伴う非化膿性髄膜脳炎 〔佐藤尚人(青森県)〕

 日本短角種,12カ月齢,去勢,鑑定殺.2011年4月8日,肉用牛113頭を飼養する農場において,12カ月齢の肥育牛に元気消失,食欲不振,発熱,意識障害等がみられた.抗生物質等を用いた治療が実施され発熱は改善されたものの,その他の症状が改善されなかったことから,4月21日,鑑定殺を実施した.

 剖検では,左肺前葉前部の胸壁への癒着が認められた.また,胸垂の皮下組織に膠様浸潤がみられた.

 組織学的には,大脳では,単核細胞を主体とした囲管性細胞浸潤,髄膜炎,グリア細胞増殖,肥満膠細胞の増殖が認められた.グリア細胞増殖は,血管周囲に認められる傾向にあり(図31A),それらの周囲には軽度に好中球が浸潤していた.大脳髄質で肥満膠細胞の増殖がみられた(図31B).中脳,橋,延髄では,囲管性細胞浸潤が認められたが,軽度であった.三叉神経節では,神経細胞周囲に単核細胞を主体とした細胞浸潤が認められ,一部の神経細胞は変性していた.抗 Listeria monocytogenes 1a及び4b抗体(動衛研)を用いて,大脳及び三叉神経節について免疫組織化学的染色を実施したが陽性抗原は認められなかった.

 病原検索では,大脳のホルマリン固定パラフィン切片を用いたPCR検査を行ったが,牛伝染性鼻気管炎ウイルス(IBRV)及びアカバネウイルス(AKAV)は陰性であった.また,IBRV及びAKAVに対する中和抗体価は,2倍未満であった.

 牛に非化膿性脳炎を引き起こす疾患は,IBR,ボルナ病等のウイルス性疾患の他,クラミジア感染症が考えられるが,組織所見及び病原検索から病因を特定することはできなかった.

牛の大脳にみられたグリオーシスを伴う非化膿性髄膜脳炎