33 牛胎子の肝臓における牛ヘルペスウイルス1型(BHV1)による核内封入体形成を伴う多発性巣状壊死 〔村山丹穂(茨城県)〕

 ホルスタイン種,雄,胎齢169日齢,流産胎子.乳牛約120頭飼養農家で2011年1月から3月に9頭の初産牛のうち3頭に早流産が確認された.当農場では自家産牛のみ飼養し,初産牛は乾乳牛と混飼されており,早流産前後で牛群に異常はみられなかった.

 剖検では,著変は認められなかった.

 組織学的には,肝臓に多発性巣状壊死が認められ,周辺の肝細胞,巨核球等に好酸性ないし両染性の核内封入体が散見された(図33).壊死巣ではまれに線維素の析出を伴っていた.抗BHV1 glycoprotein Cマウスモノクローナル抗体(VMRD)を用いた免疫組織化学的染色では壊死巣及び周辺細胞の細胞質に陽性反応が認められた.透過型電子顕微鏡による検索では,壊死部にエンベロープを持たない直径約80nmのヌクレオカプシドを持つ未成熟ウイルス粒子が散見され,一部でコアを欠いていた.加えて,直径約130nmの成熟ウイルス粒子がまれに認められた.脾臓では肝臓と同様の病変が多巣性に,腎臓,肺,胸腺及び腸間膜リンパ節ではまれに認められた.

 病原検索では,母牛の白血球及び血清,流産胎子の肝臓,脾臓,腎臓及び肺についてBHV1のPCRを実施したところ,流産胎子の全検体が陽性であった.MDBK-SY細胞によるウイルス分離は陰性であった.主要臓器から病原細菌は分離されなかった.

 以上から,本症例はBHV1感染による流産と診断された.

牛胎子の肝臓における牛ヘルペスウイルス1型(BHV1)による核内封入体形成を伴う多発性巣状壊死