39 牛の心臓のB細胞性リンパ腫 〔山崎俊雄(福井県)〕

 ホルスタイン種,雌,5歳,鑑定殺.発症牛は搾乳牛34頭を飼養する農場が2007年2月に県外から導入し,2009年12月に牛白血病ウイルス(BLV)の抗体検査(寒天ゲル内沈降反応)で陽転が確認された.2010年3月下旬,体表リンパ節の腫大は認められなかったが,左右の角膜破裂,両眼球の突出が著しかったことから,病性鑑定を実施した.

 剖検では,左右の心耳にうずら卵大の灰色腫瘤が数個認められ,心室壁は斑状に出血し,右心室壁は灰白色を呈していた.腫瘤は眼窩,胆嚢,第四胃,腸間膜,腎臓でも認められた.

 組織学的には,心臓では心外膜から心内膜下組織にリンパ球様腫瘍細胞が増殖し,心筋線維間へ浸潤していた(図39).腫瘍細胞は細胞質は乏しく中型の類円形核を持ち,染色質は豊富で,核小体は1個ないし不明瞭であった.有糸分裂像が多数認められた.同様の腫瘍細胞は,眼球周囲組織,第四胃幽門部,小腸と大腸の漿膜から腸間膜,腎臓,子宮にも浸潤していた.免疫組織化学的染色の結果,心臓の腫瘍細胞は,CD79α(DAKO)陽性,CD3(DAKO)陰性で,B細胞性リンパ腫と判定された.

 病原検索では,主要臓器から病原細菌は分離されなかった.リアルタイムPCRにより,血液,心臓,脾臓,腎臓,内腸骨リンパ節から1×102〜4.6×103copy/100ngのBLV遺伝子が検出された.

 以上から,本症例は牛白血病(地方病型)と診断された.

牛の心臓のB細胞性リンパ腫