44 アルパカのヨーネ菌による空腸及び腸間膜リンパ節における肉芽腫性炎 〔矢島和枝(兵庫県)〕

 アルパカ,雌,10カ月齢,鑑定殺.2010年10月にニュージーランドより15頭輸入されたうちの1頭が,動物検疫所での係留検査(CF,ヨーニン,糞便培養等)において,糞便のリアルタイムPCR(rPCR)検査でヨーネ菌遺伝子が検出されたことから自衛殺処分された.残りの14頭は検査陰性の結果から解放された.本症例は解放されたうちの1頭で,兵庫県内の施設に移送後,12月に糞便培養検査が陽性となったため自衛殺処分された.本症例に下痢等の臨床症状は認められなかった.

 剖検では,空腸上部の腸間膜リンパ節の一つが顕著に腫大していた.

 組織学的に,空腸では,絨毛の短縮と先端部の膨化がみられ,粘膜固有層には,好中球や線維素を伴う多数の類上皮細胞の浸潤が認められた(図44A).回腸・盲腸は,パイエル板に限局して類上皮細胞の浸潤がみられた.腸間膜リンパ節には,好中球,線維芽細胞,多核巨細胞を伴う類上皮細胞のび漫性浸潤が認められた.その他,扁桃,胸腺等でも類上皮細胞の浸潤がみられ,肝臓では,微小肉芽腫が散見された.チール・ネルゼン染色では,各臓器に浸潤した類上皮細胞,多核巨細胞の細胞質内に多数の抗酸菌が確認された(図44B).

 細菌学的検査では,臓器乳剤のrPCR検査で,空腸3.07×103pg/well,回腸1.98×10pg/well,腸間膜リンパ節2.22×103pg/well,直腸便では,PCR阻害物質の吸着剤を含むキット使用により,5.69×10pg/wellのヨーネ菌遺伝子が検出された.

 以上より,本症例はヨーネ病と診断された.アルパカのヨーネ病は臨床症状に乏しいが,糞便中に多量に排菌されることから,家畜防疫上注意が必要であると考えられた.

アルパカのヨーネ菌による空腸及び腸間膜リンパ節における肉芽腫性炎