8 鶏の高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)による脾臓の多発巣状壊死 〔山田美那子(大分県)〕

 採卵鶏,ジュリア種,238日齢,斃死例(死後約2時間).2011年2月2日,死亡羽数の増加がみられたとの連絡があり,同日立入を行い斃死鶏6羽について病性鑑定を実施した.

 剖検では,肉冠,肉垂及び眼瞼に著変は認められなかった.6羽中4羽に卵墜が観察された.

 組織学的には,脾臓の莢組織に一致して壊死巣が散見された(図8).また,肝臓,膵臓にも壊死巣が散見された.大脳では,ミクログリアの増殖を伴った壊死巣が散見された.十二指腸漿膜面には卵黄の付着が観察された.腎臓,心臓,肺,気管,卵管に著変は認められなかった.マウス抗A型インフルエンザウイルス抗体(Serotec)を用いた免疫組織化学的染色によって,脾臓の壊死巣やその周囲に陽性反応が観察された.また,肝臓,大脳,膵臓の壊死巣,腎臓の糸球体,心筋細胞,十二指腸粘膜固有層,気管粘膜固有層や諸臓器の血管内皮細胞にも陽性反応が多数認められた.

 病原検索では,細菌学的検査は実施せず.ウイルス学的検査では,遺伝子検索において,6羽中5羽からA型インフルエンザウイルス及びH5亜型に特異的な遺伝子が検出された.ウイルス分離は,全6検体で鳥インフルエンザウイルスが分離され,ニューカッスル病ウイルスは分離されなかった.分離ウイルスは動物衛生研究所にてH5N1亜型の高病原性ウイルスと同定された.

 以上より,本症例は高病原性鳥インフルエンザと診断された.

鶏の高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)による脾臓の多発巣状壊死