ボリスブラウン種，雄，5カ月齢，鑑定殺．2015年11月，採卵種鶏約17,000羽を飼養する農場の1鶏舎の1房（雄53羽，雌509羽）で，雄12羽が顔面腫脹，斜頸及びふらつきを呈したため5羽について病性鑑定を実施した．同居している雌に症状はなく，産卵率の低下も認められなかった．

　剖検では，5羽に顔面腫脹，3羽に片側肉垂の肥厚，1羽の眼窩下洞にチーズ様物が認められた．

　組織学的に，肉垂では軽度の痂皮形成，真皮浅層における軽度の偽好酸球の浸潤及び水腫，並びに真皮深層から皮下組織にかけて，偽好酸球，単核球，菌塊，線維素を含む広範囲な壊死が認められた（図40）．壊死辺縁部では多核巨細胞，類上皮細胞及び線維芽細胞も認められた． 家兎抗Pasteurella multocida 血清（動衛研， 茨城）を用いた免疫染色では，菌塊に一致して陽性反応が認められた．その他の臓器では，心外膜に軽度の炎症細胞浸潤が認められた．

　病原検査では，全羽の結膜スワブからP. multocida（莢膜抗原A型）が分離された．気管スワブを用いたMycoplasma gallisepticum 及びM. synoviae 遺伝子検査は陰性であった．また，気管スワブを発育鶏卵尿膜腔内に接種し，2代培養後の遺伝子検査では鶏伝染性気管支炎ウイルス及びパラミクソウイルス科ウイルスは陰性 であった．

　以上より，本症例は鳥パスツレラ症と診断された．