牛の大腸菌性乳房炎全身症状を伴う乳房炎

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特徴

牛の大腸菌性乳房炎大腸菌性乳房炎は、Escherichia coli(大腸菌)、Klebsiella属、Proteus属など大腸菌群に属する細菌の乳房内感染によって起こる疾病で、急性あるいは甚急性の経過をたどることが多い。これらの細菌は、それぞれ糞便、おが屑、汚水中に主として生息しており、牛床やパドックなどの牛周囲の環境汚染や衛生状態の不良が本疾病の発生に深く関わっている。特に夏から秋の高温多湿の時期や分娩後などの抗病性が低下する時期に発生が多い。

本疾病では、発熱や脱水、食欲の低下などの全身症状を示し、感染乳房は強い痛みと熱感を伴い腫脹(しゅちょう)する。泌乳量は著しく減少し、乳汁は多くの凝集塊(ぎょうしゅうかい)を含み水様性を示す。症状が重篤な場合、泌乳停止や起立不能となり、死亡に至る。


対策

環境中に存在する大腸菌群との接触を防ぐために、牛舎内やパドックを清潔に保ち、十分な換気によって牛舎内を乾燥させる。また、適正な飼養管理によって健康状態を維持し、ストレスの少ない快適な環境の提供が疾病予防につながる。

本疾病を疑う場合は、搾乳可能なものに対しては速やかに搾乳を行い、乳房内の細菌や毒素を排除する。また炎症を抑えるために流水などで乳房を冷却する。さらに抗生物質による原因療法ならびに全身症状に対する輸液などの対症療法を行うが、抗生物質の使用時には、大腸菌群の死滅時に発生する毒素のショックに十分注意を払う必要がある。

[写真:大腸菌性乳房炎で起立不能となった乳用牛の乳房。乳房は赤く腫脹している]

(動物衛生研究所 菊佳男)


情報公開日:2015年2月25日

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