牛伝染性リンパ腫吸血昆虫などが媒介

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届出
伝染病

牛、水牛

特徴

牛伝染性リンパ腫牛伝染性リンパ腫は牛と水牛の届出伝染病で、地方病性と散発性に分けられる。発生の大部分を占める地方病性牛伝染性リンパ腫は、牛伝染性リンパ腫ウイルスの感染によって起こる。ウイルスに感染した牛の多くは無症状だが、感染牛の約30%でリンパ球数の増加(持続性リンパ球増多症)が起こり、その一部(感染牛の5%以下)が発症する。

発症牛はリンパ節が腫れ、眼球突出が見られる場合もある。発症するのは年齢の進んだ乳用牛や肉用繁殖牛に多く、近年増加する傾向にある。症状の有無にかかわらず、一度感染した牛は生涯ウイルスを保有して感染源となる。

牛伝染性リンパ腫ウイルスは血液を介して感染すると考えられ、アブなどの吸血昆虫による伝播(でんぱ)や、感染牛の血液に汚染された注射針や器具による人為的伝播、あるいは初乳による感染母牛から子牛への感染が疑われる。空気や飛沫(ひまつ)による感染はないとされる。牛伝染性リンパ腫ウイルスは人には感染しない。散発性牛伝染性リンパ腫の原因は不明である。


対策

地方病性牛伝染性リンパ腫に有効なワクチンや治療法はない。農場では感染牛から感染が拡大するために、感染牛を導入しないことが大切である。感染牛がいる場合には、非感染牛と分けて飼育するなど、感染を拡大させない対策をとる。

特に、持続性リンパ球増多症の牛は一見健康だが、ウイルスを多く保有しているため、より感染源となりやすいと考えられる。農場の清浄化には、計画的な淘汰(とうた)を進めるなどの長期的な対策が必要である。散発性牛伝染性リンパ腫には有効な対策がない。

[写真:牛伝染性リンパ腫に感染した牛。体表リンパ節の明瞭な腫大(矢印部)が見られる]

(動物衛生研究所 鈴木孝子)

参考情報

・家畜の監視伝染病 牛伝染性リンパ腫


情報公開日:「家畜疾病図鑑」『日本農業新聞』 2011年9月21日、14面に掲載。

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