牛肺疫(contagious bovine pleuropneumonia)
1.原因
Mycoplasma mycoides subsp. mycoides small-colony (SC) type。莢膜ガラクタンは、静脈内接種により子牛に呼吸停止、肺出血と水腫、血栓症を引き起こすなどの毒性が明らかにされている。また、株の毒力は過酸化水素産生能と相関するという。
2.疫学
主として接触感染および飛沫感染により伝播する。清浄地域での発病率は高いが、汚染地域では症状を示さない例が多い。致死率は動物の感受性と株の毒力に依存し、多様(発病牛の50%まで)である。
3.臨床症状
食欲不振、発熱、および呼吸困難、多呼吸、発咳、鼻汁漏出などの呼吸器症状がみられる。しばしば亜急性あるいは不顕性感染を起こし、耐過後は保菌状態を持続する。
4.病理学的変化
線維素壊死性肺炎、漿液線維素性胸膜炎、および血液を混じた胸水の貯留を特徴とする。肺の割面は小葉間水腫により大理石様紋理を呈する。肺病変(壊死)部はやがて線維性被膜に囲まれ、病原体はそこに長期間生残する。
5.病原学的検査
鼻腔スワブ、気管支肺胞洗浄液(生前)、肺病変部、リンパ節、胸水(剖検時)を材料とし、病原体を培養により分離する。高度免疫血清を用いた発育阻止試験、蛍光抗体染色などの免疫学的試験法、あるいはPCR法により確定診断を行う。
6.抗体検査
補体結合反応が行われる。海外では近年、競合ELISA法およびイムノブロッティングも使用されている。なお、国内の検査に使用される補体結合反応用抗原は動物衛生研究所で製造している。
7.予防・治療
徹底した検疫により国内侵入を阻止する。感染牛が摘発された場合には、治療は行わず、速やかに殺処分する。なお、海外では弱毒株を用いた生ワクチンが使用されている。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)