家畜伝染病

リフトバレー熱(Rift Valley fever)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:牛、水牛、鹿、めん羊、山羊

1.原因

 

 ブニャウイルス目(Bunyavirales)フェヌイウイルス科( Phenuiviridae)フレボウイルス属(Phlebovirus)Rift Valley fever virusが原因であり、本ウイルスは一本鎖のマイナスRNAウイルスで、大きさは80〜110nm、エンベロープを保有する。遺伝子は3分節でS、MおよびLセグメントに分けられる。Sセグメントはambisenseである。

 

 

2.疫学

 

 1918年に初めて報告され、ウイルスは1931年ケニヤの流行時初めて分離した。サハラ砂漠以南の多くのアフリカに存在している。2000年にアラビア半島で発生し、アフリカ以外では初めての発生となった。1977年のエジプトの発生ではナイル川デルタで飼養頭数の約半分の牛や羊が感染し、人は18,000人以上の感染者と約600人の死者を出した。伝播はイエカ属、ヤブカ属、ハマダラカ属、マダラカ属など多くの吸血蚊がベクターであり、サシバエやヌカカなどの可能性も示唆されている。多雨の後、蚊の大発生後流行を起こし易い。人が感染動物の血液や組織などに接触すると効率に本ウイルスに感染するので注意が必要である。

 

 

3.臨床症状

 

 潜伏期は羊、山羊、牛で幼若な場合12〜24時間、成獣ではさらに長い。一週齢以下では急激な発熱、虚脱が見られ、36時間以内で死亡。死亡率は70〜100%。成羊、成山羊では発熱、嘔吐、膿様の鼻漏、下痢血便、歩行不安定などをともない、死亡率は20〜30%程度。羊、山羊、牛が妊娠していた場合には流産・死産。人の場合にはインフルエンザ様の症状を起こし、髄膜脳炎や黄疸を併発する場合もある。死亡率は1%前後である。

 

 

4.病理学的変化

 

 肝に巣状の壊死。死亡動物では充血、出血性など強度の肝炎。その他、漿膜、心内膜、胃腸粘膜などに点状出血がみられることもある。胎児では胸腔に多量の出血が認められる場合もある。

 

 

5.病原学的検査

 

 ウイルス分離(乳飲みマウスおよびハムスター、発育鶏卵、VeroおよびCER細胞)の後,陽性血清を用いた中和試験で同定する。採材組織を用いた蛍光抗体法によるウイルス抗原やRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法によるウイルス遺伝子の検出を試みる。

 

 

6.抗体検査

 

 ELISA(感度が高い)、血球凝集抑制試験(HI試験)(安全性高いが、交差反応あり)、中和試験(特異性高いが、生ウイルス使用により、人への危険性)、CF反応、ゲル内沈降反応、蛍光抗体法など。それぞれの抗体が検出可能になるまで感染後約1週間を要する。

 

 

7.予防・治療

 汚染国では、羊、山羊および牛用に生ワクチンおよび不活化ワクチンがある。清浄国においては、発生国からの家畜の輸入禁止と動物検疫所における摘発。侵入した場合は早期の摘発淘汰。殺虫剤によるベクターの駆除もあるが確実ではない。有効な治療法はない。

 

 

8.発生情報

 

 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報

 

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)



編集:動物衛生研究部門

(令和3年12月 更新)

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