家畜伝染病

出血性敗血症(hemorrhagic septicemia)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:牛、水牛、鹿、めん羊、山羊、豚、いのしし

1.原因

 

 Pasteurella multocida 血清型B:2、B:2・5およびE:2(6:Bおよび6:E)を原因とする急性で致死的な敗血症。原因菌は莢膜抗原型がBおよびE、菌体抗原型はHeddlestonの分類では2および2・5、波岡の分類では6である。主として牛および水牛が罹患する。

 

 

2.疫学

 

 東南アジア、中近東、アフリカおよび中南米諸国で発生報告があるが、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、西ヨーロッパにはない。東南アジアではB:2型が多く、アフリカではE:2型が多い。中近東では両血清型が混在する。発症牛あるいは保菌牛との接触により、あるいは本菌で汚染された牧草、敷わら、飲水などから、経気道感染または経口感染する。一年を通じて発生するが、乾期の終わりから雨期にかけて多発する。

 

 

3.症状

 

 甚急性または急性に経過する。甚急性例では突然死する。急性例では動きが鈍くなり、元気消失、発熱、反芻停止、流涎、流涙、粘液様鼻汁などがみられる。咽喉頭部、下顎、頚側、胸前などが腫脹する。咳、呼吸促迫に続き呼吸困難になり横臥する。体温下降し、発症後、概ね数時間から2日間の経過で死亡する。回復することはほとんどない。

 

 

4.病理学的変化

 

 甚急性例では顕著な所見はない。急性例では下顎や頚部、胸前の皮下に膠様浸潤がみられる。胃・腸管の漿膜面、心膜には広範な充出血点がみられる。ときに軽度の胃腸炎がみられる。経過の比較的長い例では肺の充血水腫、線維素性心外膜炎がみられる。

 

 

5.病原学的検査

 

 血液または臓器の塗抹標本(メチレンブルー染色またはギムザ染色)で本菌は両端染色性を示す。これらの材料を血液寒天培地に培養すると直径1mm前後の灰白色円形のスムース型集落の発育がみられる。生化学的性状を調べるとともに血清型別を行う。本菌特異的PCR法、莢膜抗原型別PCR法および本病を引き起こすB型株に特異的なPCR法も有効。死後時間の経過した材料では、乳剤にしてマウスの皮下、腹腔内に接種し1日で死亡するようであれば、その心血から本菌が培養できる。

 

 

6.抗体検査

 

 急性の経過をとるため、抗体検査は実用的でない。

 

 

7.予防・治療

 

 発生国では不活化ワクチンが使用されている。本病は急性経過をとるため的確な治療法はない。原因となる型の菌は牛、水牛はもとより山羊、めん羊、豚、象などから分離されているので、これらの動物とともに本病が日本に持ち込まれないように輸入動物の検疫が重要である。

 

 

8.発生情報

 

 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報

 

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)



編集:動物衛生研究部門

(令和3年12月 更新)

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