ヨーネ病(Johne's disease−paratuberculosis)
1.原因
本病の原因菌はヨ−ネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis) と呼ばれ、マイコバクテリウム属菌で抗酸染色によって赤色に染まり、結核菌によく似た形態をしている。大きさは1〜2x0.5μmの桿菌で、芽胞、鞭毛、莢膜を欠く。ヨ−ネ菌は結核菌用の培地に発育できず、その発育にはマイコバクチンと呼ばれる特別な成分を必要とし、寒天培地上のコロニー形成には2ヵ月以上を要する遅発育菌である。
2.疫学
わが国では、1998年度から搾乳牛及び種雄牛などを対象に定期的な全頭検査が実施されているが、現在も年間数百頭が摘発されている。感染経路は経口感染が主であり、感染母牛から子牛への感染が伝播経路として重要である。同居牛への水平感染や母牛が重度のヨーネ病に罹患している場合は、胎児への胎盤感染も起こる。
3.臨床症状
ヨ−ネ病は牛、めん羊、山羊などの反すう動物に、慢性の頑固な間欠性の下痢、乳量の低下、削痩等を引き起こす。妊娠や分娩などのストレスが発病の誘因とされている。
4.病理学的変化
肉眼病変として腸管粘膜のワラジ状の肥厚、腸間膜リンパ節の腫大がみられる。組織学的には腸間粘膜や腸間膜リンパ節のマクロファージ内に集塊状のヨーネ菌が認められる類上皮細胞肉芽腫病巣や、多核巨細胞もみられる。
5.病原学的検査
直接鏡検:糞便の直接塗抹標本を抗酸菌染色し、集塊状の抗酸菌を検出する。
分離培養:糞便あるいは剖検時の腸管(回盲移行部等)、腸間膜リンパ節などをマイコバクチン添加ハロルド培地で培養する。灰白色から象牙色のコロニー形成までに2〜5ヵ月を必要とする。
PCR法:糞便中等に存在するヨーネ菌に特異的なDNAを検出する。迅速診断法として有用である。
6.免疫学的検査
血清学的検査としてELISA法、補体結合反応が応用されている。感染牛の細胞性免疫を指標とする検査として、ツベルクリン検査と同様な遅延型過敏反応を検出するヨーニン皮内反応が行われる。また、新たなヨーネ病の診断法としてインターフェロン・ガンマ検査も試みられている。なお、国内の検査に使用される補体結合用抗原、及び皮内反応用抗原は動物衛生研究所で製造している。
7.予防・治療
現在、実用的なワクチンはなく、化学療法も困難である。本病の防疫対策には、患畜及び保菌牛の摘発・殺処分及び汚染物の徹底した消毒が有効である。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)