鼻疽(glanders)
1.原因
鼻疽の原因菌である鼻疽菌(Burkholderia mallei)は、グラム陰性、好気性桿菌、鞭毛を欠き運動性はない。鼻疽菌の生化学的活性は弱く、糖分解能も劣り、発育は穏やかである。主に馬やロバの馬属を侵すが、時には人にも強い毒性を示す人獣共通感染症である。鼻疽菌は感染症法の三種病原体等に指定されており、同法の規制の対象となる。
2.疫学
我が国での発生がなく、中近東、アジア、アフリカ、中南米の一部の国で発生がみられる。感染は、馬同士の直接的、間接的な接触により、経口感染、経気道感染、経皮感染、創傷感染がみられる。
3.臨床症状
急性型では、発熱、膿瘍鼻汁、鼻腔粘膜の結節、肺炎、皮下リンパ節管の念珠様結節、膿瘍や潰瘍など特異的な鼻疽結節がみられ、慢性型では、微熱を繰り返し、徐々に痩せていく。
4.病理学的変化
鼻腔、気管、肺、リンパ節、肝臓、脾臓などに結核結節に似た乾酪化結節や膿瘍を形成する。また、慢性例では潰瘍が治癒して瘢痕が形成される。組織学的には、肉芽腫炎を呈する。
5.病原学的検査
鼻疽菌の分離培養には、鼻汁や膿瘍、結節部位などの病変部を材料に、3%グリセリン寒天培地(pH6.0)あるいは0.5%馬血液加寒天培地を用いる。また、病変材料の乳剤を雄モルモットの腹腔内に接種すると、鼻疽菌に特異的なStraus反応と呼ばれている精巣の腫脹や化膿がみられる。本菌特異的PCR法、リアルタイムPCR法も有用である。
6.抗体検査
点眼により下瞼のアレルギー反応をみるマレイン反応、血清診断として補体結合反応、ELISA反応が用いられている。
7.予防・治療
ワクチンはなく、患畜は殺処分する。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、馬の感染症第4版(JRA総研)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)