家畜伝染病

小反芻獣疫(peste des petits ruminants)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:鹿、めん羊、山羊

1.原因

 

 Mononegavirales(目)Paramyxoviridae(科)Paramyxovirinae(亜科)Morbillivirus(属)Peste-des-petits-ruminants virusが原因であり、本ウイルスは一本鎖のマイナスRNAウイルスで、大きさは約150nm、エンベロープを保有する。牛疫ウイルス(Rinderpest virus)に近縁である。

 

 

2.疫学

 

 本病の発生地域は西アフリカに限定されていたが、近年では東、中央および西アフリカ、中近東、東アジアまで拡大している。感染動物の排泄物の飛沫などに直接接触することで伝播する。死亡率は非常に高いが、常在地域ではやや低い。

 

 

3.臨床症状

 

 潜伏期は通常2〜7日。40〜41℃の高熱、食欲減退、沈鬱などの後、流涙や鼻汁は最初水様であるが後に膿様となる。口周囲および眼瞼の粘膜は充血し、さらに、眼瞼、口唇、口蓋、歯齦、鼻粘膜、舌などの粘膜表面はチーズ様の物質で覆われ、壊死した細胞下層では糜爛が見られる。発症後2〜3日で下痢が見られ、軟便、水溶性、血液や粘膜組織を含んだ激しい下痢と変化し、脱水症状で死亡する。また、肺炎の症状も伴う。症状を示した後7〜8日で死亡する例が多い。

 

 

4.病理学的変化

 

 肺の赤色化、消化管粘膜に出血性の変化(充出血、糜爛、潰瘍)、結腸の線状出血など。

 

 

5.病原学的検査

 

 ゲル内沈降法(牛疫との区別不可能)。モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色(牛疫との区別可能)、Immunocapture ELISA(牛疫との区別可能)、RT-PCR(牛疫との区別可能)、ウイルス分離など。

 

 

6.抗体検査

 

 モノクローナル抗体を用いた競合ELISA、中和試験など。

 

 

7.予防・治療

 

 汚染国では、近年開発された弱毒生ワクチンを用いる。以前は牛疫の血清と交差反応することを利用して、牛疫生ワクチンが代用されたこともあったが、国連食糧農業機関(FAO)が推進する牛疫撲滅計画において牛疫のサーベイランスの妨げとなることから使用が禁止された。清浄国においては、発生国からの家畜の輸入禁止と検疫所における摘発が重要である。発生した場合は早期に罹患した動物やその疑いのある動物の摘発淘汰を行う。有効な治療法はない。

 

 

8.発生情報

 

 世界における小反芻獣疫の発生状況(農林水産省)

 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報

 

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)



編集:動物衛生研究部門

(令和3年12月 更新)

ページの先頭へ↑