家畜伝染病

家きんコレラ(fowl cholera)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:鶏、あひる、七面鳥、うずら

1.原因

 

 本病はPasteurella multocidaの感染により種々の鳥類に発生する伝染病。原因菌の血清型は、莢膜抗原型はAが主で、菌体抗原型はHeddlestonの分類では1、3、4、波岡の分類では5、8、9が主である。法定伝染病の対象となるのは鶏、あひる、うずら、および七面鳥が本菌に感染し、それらの70%以上が急性敗血症で死亡した場合とされている。

 

 

2.疫学

 

 アジア、アフリカ、中近東、欧米諸国で発生がみられる。わが国でも種々の鳥類に発生がみられているが、法的措置の対象になった発生例は1954年以降ない。季節の変わり目に発生することが比較的多い。経気道感染または経口感染する。七面鳥や水禽類は鶏よりも本菌に対する感受性が高い。また成鳥は雛よりも感受性が高い。

 

 

3.臨床症状

 

 通常は発症率および死亡率が高く集団的に相次いで急性経過で倒れるが、慢性例や比較的穏やかな感染もみられる。急性例では、沈鬱、発熱、食欲廃絶、口からの粘液流出、下痢、呼吸速迫、肉冠や肉垂のチアノーゼなどを示し、2〜3日の経過で死亡する。甚急性例ではこれらの症状をほとんど示さずに死亡する。

 

 

4.病理学的変化

 

 甚急性に死亡した例では肉眼的に著変は認められない。急性死亡例では肝臓と脾臓が腫大し、肝臓に黄白色の小さな壊死巣が多発する。皮下、心臓、小腸などの漿膜面に点状出血あるいは出血斑がみられる。心嚢水や腹水が増量し肺水腫がみられる。病理組織学的には、鬱血した血管内に多数の菌が存在し、肝臓や脾臓に多数の菌塊と多発性巣状壊死がみられる。

 

 

5.病原学的検査

 

 心血や臓器の塗抹をメチレンブルー染色あるいはギムザ染色し、鏡検で、両端染色性の小桿菌を観察する。これらの材料を血液寒天培地で培養して菌を分離し、生化学的性状を調べる。本菌特異的PCR法による同定も有効である。分離菌の血清型別には莢膜抗原型別PCR法も有用である。

 

 

6.抗体検査

 

 急性の経過をとるため、抗体検査は実用的でない。

 

 

7.予防・治療

 

 海外ではワクチンが使用されている。わが国では衛生管理を徹底する。法的措置の対象例は発生群を淘汰し、飼育場の消毒など法に基づく措置をとる。その他の例でも、同様な措置をとることが望ましい。抗菌剤の投与は保菌鳥を作る可能性がある。

 

 

8.発生情報

 

 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報

 

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、鳥の病気第6版(鶏病研究会)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)



編集:動物衛生研究部門

(令和3年12月 更新)

ページの先頭へ↑