届出伝染病

牛伝染性リンパ腫(bovine leukosis)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:牛、水牛

1.原因

 

 牛伝染性リンパ腫(Enzootic bovine leukosis: EBL)は、レトロウイルス科(Retroviridae)、オルソレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae)、デルタレトロウイルス(deltaretrovirus)に属する牛伝染性リンパ腫ウイルス(bovine leukemia virus: BLV)の感染により引き起こされる悪性腫瘍疾患である。届出伝染病としての“伝染性リンパ腫”にはウイルスが関与しない散発型のリンパ肉腫(Sporadic bovine leukosis: SBL)も含まれるが、こちらはウイルスが原因ではないため伝染性はなく、原因は不明である。

 

 

2.疫学

 

 牛伝染性リンパ腫は平成10年より届出伝染病として発生報告が義務づけられた。近年、発生報告数は増加の一途をたどっているが、そのほとんどがBLV感染が原因となるリンパ肉腫である。BLVは牛のBリンパ球に感染するため、感染牛の血液、乳汁が感染源となる。アブなどの吸血昆虫による機械伝播や、去勢、除角または直腸検査など、出血を伴う医療行為による水平伝播が主な感染経路と考えられる。また、胎内感染や経乳感染も成立する。

 

 

3.臨床症状

 

 EBLとSBLに共通する特徴病変はいずれも全身性のリンパ肉腫であり、体表リンパ節や直腸検査による骨盤腔内の腫瘤の触知などにより診断することが可能である。EBLは4〜8歳の成牛で発症することが多いが、近年では若齢での発症も報告されている。発症牛には削痩、元気消失、眼球突出、下痢、便秘などの臨床症状がみられるほか、末梢血液中には量的な差はあるが異型リンパ球の出現が認められる。BLVに感染した牛の全てがEBLを発症するわけではなく、感染牛の60〜70%は無症状キャリアーであり、約30%は持続性リンパ球増多症(PL)を呈するが、臨床的には正常とされる。数ヶ月〜数年の無症状期を経て、数%の感染牛がリンパ肉腫を発症し予後不良で死に至る。

 

 

4.病理学的変化

 

 EBLとSBLの各病型では、腫瘍好発部位ならびに腫瘍化するリンパ球が異なる。EBLではBリンパ球が腫瘍化し、リンパ節のみならず全身諸臓器に広く腫瘍形成が認められる。SBLは胸腺型、皮膚型、子牛型の病型に分類され、胸腺型と皮膚型ではTリンパ球が、子牛型ではTおよびBリンパ球が腫瘍化するとされている。胸腺型ではリンパ節および胸腺、皮膚型では皮膚に、子牛型ではリンパ節のほか、肝臓や骨髄で腫瘍形成が多く認められる。腫瘍化したリンパ節はび漫性に著しく増殖した腫瘍細胞によって構成され、激しい組織崩壊が認められる。

 

 

5.病原学的検査

 

 病原体の関与するEBLは、ウイルス学的検査によって診断できる。診断法としては、シンシチウム(多核巨細胞)法を用いたウイルス分離、抗体検査ならびにPCRによるウイルス遺伝子検査が可能である。

 

 

6.抗体検査

 

 EBLについては、寒天ゲル内沈降試験およびELISA法による抗体検出が行われている。

 

 

7.予防・治療

 

 本疾病に対するワクチンや治療法はない。EBLにおいては、BLV感染牛を確実に摘発して隔離・並び替えなどのウイルスの伝播を防ぐ対策を取ることが最も有効な防疫手段となる。

 

 

8.発生情報

 

 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報

 

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)


成牛型白血病の発症例。腸骨下リンパ節の腫大が見られる。 牛伝染性リンパ腫ウイルスにより羊胎仔腎臓細胞に形成されたシンシチウム。ギムザ染色。
写真1:成牛型白血病の発症例。腸骨下リンパ節の腫大が見られる。 写真2:牛伝染性リンパ腫ウイルスにより羊胎仔腎臓細胞に形成されたシンシチウム。ギムザ染色。


編集:動物衛生研究部門

(令和3年12月 更新)

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