アイノウイルス感染症(Aino virus infection)
1.原因
ブニャウイルス目(Bunyaviridales)、ペリブニャウイルス科(Peribunyaviridae)、オルソブニャウイルス(Orthobunyavirus)属、アイノウイルス種(Aino orthobunyavirus)、アイノウイルス(Aino virus)。ゲノムはマイナス1本鎖RNAで、3本の分節で構成。アカバネウイルスに近縁であるが、中和試験で交差しない。
2.疫学
アイノウイルスは吸血昆虫(主に体長1〜3mmほどのヌカカ)によって媒介され、牛、水牛に伝播する。ベクターの活動が盛んになる夏から秋にかけてウイルスの伝播が起こる。妊娠牛が感染した場合、その伝播時期の直後から流産、冬から先天異常を持った子牛の分娩が翌年の春にかけてみられる。現在のところ、発生は近畿地方以西でのみ確認されている。
3.臨床症状
アカバネ病に類似する。成牛は不顕性感染であるが、胎子に感染すると流産や早産・死産あるいは先天異常子の出産が起こる。先天異常子には虚弱や体形異常、起立困難、神経症状、盲目等が認められる。
4.病理学的変化
先天異常子には四肢関節や脊柱の彎曲、大脳欠損(水無脳症)が認められる。頚部から胸部にかけて脊柱彎曲がみられることが多く、さらに小脳形成不全が高率に認められるのが特徴である。感染胎子の原発病変は非化膿性脳脊髄炎、多発性筋炎である。
5.病原学的検査
流産胎子など、ウイルス感染から時間が経過していない場合、胎子の血液や脳脊髄等の臓器乳剤を材料とし、培養細胞への接種によりウイルス分離を行う。抗血清を用いた蛍光抗体法や免疫組織化学的染色法による神経組織内のウイルス抗原検出を行う。RT-PCR法によるウイルス遺伝子の検出も補助的診断法として有用。先天異常子からのウイルス検出は困難である。
6.抗体検査
先天異常子が初乳未摂取の場合、血清中の抗体の有無を中和試験などにより判定する。
7.予防・治療
市販されている不活化ワクチンをウイルス流行期前までに接種する。治療法はない。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)