サルモネラ症(salmonellosis)
1.原因
家畜伝染病予防法ではSalmonella serovar Dublin(サルモネラ ダブリン)、Enteritidis(サルモネラ エンテリティディス)、Typhimurium(サルモネラ ティフィムリウム)、 Choleraesuis(サルモネラ コレラエスイス)感染による牛、水牛、しか、豚、いのしし、鶏、あひる、七面鳥、うずらの疾病を届出伝染病における「サルモネラ症」と定義している。
2.疫学
分離頻度の高い血清型は牛でTyphimuriumとDublin、豚でTyphimuriumとCholeraesuisである。鶏からは多様な血清型が分離されるが、EnteritidisとTyphimurium感染により症状を示した場合が届出伝染病に該当する。飼料、ネズミ、野鳥などを介して、あるいは保菌動物の導入により農場に侵入したサルモネラは発症、あるいは未発症のまま容易に保菌化し、垂直・水平感染により農場内に感染を広げる。
3.臨床症状
サルモネラ症は起因血清型が同じでも、宿主の種類や年齢により病型が異なることが知られている。急性敗血症型(チフス様疾患)では発熱、食欲不振、元気消失を呈した後、敗血症死する。下痢症型では悪臭を伴う下痢を主徴とし、急性例の場合は早期に死に至る。慢性に経過した場合、腸炎に起因する脱水・削痩などにより発育不良となる。上記の症状に加えて肺炎や流産を引き起こす場合もある。
4.病理学的変化
急性敗血症型では急死例を除き、各種リンパ節の腫張、実質臓器の混濁腫張、空・回腸のび漫性充血、肝臓のチフス結節、巣状壊死病変形成などが見られる。下痢症型ではカタル性あるいは壊死性の腸炎像が認められる。また腸管膜リンパ節の腫張、充血、肺の肝変化、肝臓のチフス結節なども見られる。
5.病原学的検査
定法による菌分離と血清型別を実施する。
6.抗体検査
O抗原(LPS)を利用したELISAが可能であるが、標準化されたプロトコールはない。
7.予防・治療
予防のためには定期的な検査による保菌動物の摘発、隔離、汚染環境の徹底した消毒などの措置に加えて、保菌動物の導入阻止、飼育環境・器具の消毒など、衛生管理の徹底が必要である。抗菌剤投与による治療を行うが、Enteritidisを除く3血清型では多剤耐性を示す場合が多いので、薬剤の使用にあたっては分離菌の薬剤感受性を調べておくことが望ましい。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店) 、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)
鶏卵のサルモネラ総合対策指針(農林水産省、平成17年1月26日)
平成17年度養鶏場等におけるサルモネラの検査成績:家畜衛生週報、No.2927、341-342 (2006)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)