馬ウイルス性動脈炎(equine viral arteritis)
1.原因
アルテリウイルス科(Arteriviridae)、亜科(Equarterivirinae)、アルファアルテリウイルス属(Alphaarterivirus)に属するウマアルファアルテリウイルス(Alphaarterivirus equid)。これまで、馬動脈炎ウイルス(Equine Arteritis virus, EAV)と称されていた。ゲノムは一本鎖(+)RNA。
2.疫学
馬属特有の伝染病。我が国は本病の清浄国。主に種雄馬の精液中のEAVが交配あるいは人工授精で繁殖雌馬に感染し、発症した雌馬の鼻汁に排出されるウイルスの飛沫によって伝播する。欧米での発生報告があるが、我が国での発生はない。
3.臨床症状
感染馬の多くは無症状であり、長期間ウイルスを保持する。発熱、元気消失、食欲不振から、鼻汁漏出、下顎リンパ節の腫大、四肢の下脚部冷性浮腫、下痢、発疹、陰嚢腫大など様々な症状がみられるが、特に眼病変として「(馬の)ピンクアイ」と言われる、眼結膜充血が特徴的である。一般に、発症後2週間程度で回復する。妊娠馬では約50%が流産する。
4.病理学的変化
動脈炎による循環不全がおこるため、皮下組織の水腫ならびに膠様浸潤、胸水および腹水の貯留がみられる。ウイルスが小動脈中膜に親和性を示すため、組織学的には全身小動脈中膜の炎症、変性や壊死が特徴的な病変として認められる。
5.病原学的検査
鼻・咽喉頭ぬぐい液などの検査材料をRK13細胞に接種し、ウイルス分離検査を実施する。RT-PCRによる遺伝子検出も可能。
6.抗体検査
中和試験、補体結合反応、ELISA法。
7.予防・治療
生ワクチンと不活化ワクチンがあるが、特別な治療法はない。日本の防疫対策は検疫が中心であるが、ウイルス侵入時の対策として不活化ワクチンを備蓄している。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)、馬の感染症第4版(JRA総研)
写真1:動脈炎(原図:JRA総研栃木支所) |
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)