届出伝染病

ナイロビ羊病(Nairobi sheep disease)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:めん羊、山羊

1.原因

 

 ブニャウイルス目(Bunyavirales)、ナイロウイルス科(Nairoviridae)、オルソナイロウイルス属(Orthonairovirus)、ナイロビ羊病オルソナイロウイルス種(Nairobi sheep disease orthonairovirus)、ナイロビ羊病ウイルス(Nairobi sheep disease virus)。ゲノムは単鎖のマイナスRNAで、3本の分節で構成。ウイルス粒子はエンベロープを持ち、大きさは80〜120nm。

 

 

2.疫学

 

 ウイルスは、マダニ(Rhipicephalus appendiculatus など)によって媒介される。めん羊、山羊では、致死率が40〜90%に達することがある。激しい降雨などにより、湿度が上昇すると媒介マダニの分布が拡大し、疾病の流行が起こる場合もある。ナイロビ羊病は、東アフリカで発生が報告されており、インド、スリランカでは血清学的に近似のGanjam virusが分離されている。また、中国でもマダニからナイロビ羊病ウイルスが検出されている。日本国内での発生はない。

 

 

3.臨床症状

 

 ナイロビ羊病は、流行地に抗体を持たないめん羊や山羊を導入した場合、高い致死率を示す。潜伏期間は2〜5日で、高熱(41〜42℃)、元気消失、粘血便を伴う下痢を主徴とする。また、リンパ節の肥大や白血球の減少がみられる。妊娠した動物に感染すると、流産を起こす。ウイルスに対する感受性は、品種によって異なる。ヒトに感染した場合、インフルエンザ様の症状を示すが、野外での感染は希である。

 

 

4.病理学的変化

 

 初期病変として、出血を伴うリンパ節炎と消化菅、脾臓、心臓などの臓器の点状、斑状出血がみられる。後期病変として、第四胃、回盲部、結腸、直腸などに出血を伴う胃腸炎が顕著になる。回盲部、結腸、直腸には、シマウマ縞がしばしば現れる。また、胆嚢の肥大、出血が認められる。病理組織学的所見として、心筋の変性、腎炎、胆嚢の壊死が観察される。

 

 

5.病原学的検査

 

 ナイロビ羊病が疑われる動物の血液、腸間膜リンパ節もしくは脾臓を材料として、乳飲みマウスへの脳内接種、もしくはハムスターの腎臓由来の細胞(BHK-21)への接種により、ウイルス分離検査を実施する。

 

 

6.抗体検査

 

 間接蛍光抗体法が最も適する。但し、ナイロウイルス属のクリミヤコンゴ出血熱ウイルス(Crimean-Congo hemorrhagic fever virus)やDugbe virusとの間で、若干の交差反応がみられるため、注意が必要である。

 

 

7.予防・治療

 

 予防として、抗体を持たない動物の常在地への導入制限や、ウイルスを媒介するマダニの非流行地への持ち込みを防ぐ。現在、ワクチンは実用化されていない。常在地でのウイルスを媒介するマダニの防除は困難である。有効な治療法はない。

 

 

8.発生情報

 

 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報

 

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)



編集:動物衛生研究部門

(令和3年12月 更新)

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