伝染性無乳症(contagious agalactia)
1.原因
Mycoplasma agalactiae、M. mycoides subsp. capri(Mmc)、M. capricolum subsp. capricolumおよびM. putrefaciensの4種のマイコプラズマが本疾患の主要な原因菌である。本菌は短菌糸状や長菌糸状の多形を示し、寒天培地上では目玉焼き状の特徴的なコロニーを形成する。
2.疫学
本症はアメリカやヨーロッパなど世界各地に分布している。日本では1991年に初めて沖縄県で発生が確認され、以降沖縄県では10日齢〜3ヵ月齢の子山羊でMmcを原因とした発生が散発的に見られる。伝染力は極めて強く、汚染乳汁の飛沫感染、経口感染や接触感染を介して感染が広がり、母畜から胎子への垂直感染もみられる。
3.臨床症状
慢性経過で倦怠、食欲不振、乳房炎となり、乳汁は淡黄色で凝塊を含み、次第に乳量が減少し、無乳症となる。また、手根関節や足根関節などに多発性の関節炎や、角結膜炎が続発する。まれに流産や下痢もみられることがある。
4.病理学的変化
乳房炎では、実質組織の萎縮を伴い、繊維素の充満がみられるカタル性乳房炎がみられる。手根関節炎や足根関節炎では、関節周囲に結合組織の異常な増生、関節周囲の水腫がみられる。眼病変として、結膜・虹彩炎や角膜炎がみられる。
5.病原学的検査
乳汁、乳房や病変部からのマイコプラズマの分離の他、PCRによる遺伝子検出などの方法がある。
6.抗体検査
血清反応としては、補体結合反応、ELISA法、イムノブロット法が応用されている。
7.予防・治療
海外では生ワクチンおよび不活化ワクチンが用いられており、治療にはテトラサイクリン系、マクロライ系などの抗生物質が投与されるが、完治は困難な場合が多い。発症家畜は早期淘汰が望ましい。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第3版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)