山羊痘(goat pox)
1.原因
原因はポックスウイルス科(Poxviridae)カプリポックスウイルス属(Capripoxvirus)山羊痘ウイルス(Goat pox virus)で、ゲノムは約154kbの2本鎖DNAである。感染性ウイルス粒子は、300 x 270 x 200nmのれんが状。血清型は単一。山羊のみ、羊のみ、両方に感染する株があるためSGPV(Sheep Pox and Goat Pox Virus)と総称される(羊痘参照)。本ウイルスは、乾燥、酸アルカリに強い耐性を持つ。
2.疫学
季節、年齢、性別、品種に関わらず発生する。病変部に大量のウイルスを含み、呼気、唾液、尿、乳および精液に放出される。密集群では主にエアロゾル吸入による気道感染で伝播する。昆虫等による機械的伝播も想定される。持続感染によるキャリアー化はない。
3.臨床症状
感染初期は急性の熱発、沈鬱、鼻汁、流涎、流涙および体表リンパ節の腫大を主徴とする。特徴的な丘疹は2〜3日で出現する(写真1、写真2)。致死率はウイルスの病原性、宿主(品種や年齢等)および飼育環境に影響されるが、処女地では50%以上が想定される。
4.病理学的変化
病変は全身に認める。皮膚病変は、古典的ポックスサイクル(紅斑、丘疹、小嚢、膿疱、滲出)を辿り痂皮形成する。気道や口腔・消化管粘膜の病変は急速に潰瘍化する。皮膚の治癒経過は長く、5〜6週以上である。斃死獣では気管の充血、肺の白色パッチ、脾やリンパ節の膨潤と灰白壊死および肋間出血が認められる。
5.病原学的検査
急性例の血液、皮膚病変部、肥大リンパ節のバイオプシ−、斃死獣では臓器(肺、リンパ節、気管と第一胃の病巣等)を材料としたウイルス分離、電顕によるウイルス粒子の検出、光顕による封入体の免疫染色。血液、組織乳剤による寒天ゲル内免疫沈降反応(AGID)、ELISA、PCR。
6.抗体検査
ウイルス中和試験、間接蛍光抗体試験、ウエスタンブロットおよびELISAが行われる。また、間接蛍光抗体試験やAGIDは、伝染性膿疱性皮膚炎ウイルスと交差反応する。
7.予防・治療
摘発淘汰を基本とする。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)