鶏伝染性喉頭気管炎(infectious laryngotracheitis)
1.原因
ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae)、イルトウイルス属(Iltovirus)に属する。ゲノムは二本鎖DNAで、エンベロープを持つ。血清型は単一である。
2.疫学
日齢や鶏種に関係なく発生する。感染鶏群における死亡率は5〜20%である。ウイルスは呼吸器から排泄され、経口または経鼻感染で伝播する。いったん発生すると常在化しやすい。全世界的に分布している。
3.臨床症状
喉頭や気管などの上部呼吸器と結膜におけるカタル性、滲出性、出血性の炎症により、発咳、鼻汁濾出、喀痰(痰が鶏体やケージに付着することもある)などの激しい呼吸器症状を示す。特に血痰は本病の特徴である。重症の場合には痰がつまることによる窒息死も起こる。
4.病理学的変化
気管粘膜には著明な充血、出血水腫性肥厚が観察される。病変部の粘膜上皮細胞には巨細胞や核内封入体が観察される。
5.病原学的検査
喉頭、気管および肺等を材料とし、発育鶏卵漿尿膜上あるいは初代鶏腎培養細胞接種によるウイルス分離検査を実施する。 PCR法によるウイルス遺伝子検出も補助的診断法として有用である。
6.抗体検査
ELISA、中和試験。
7.予防・治療
発病鶏は回復してもウイルスが持続感染している可能性があり、鶏の移動は避けるべきである。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)