あひるウイルス性肝炎(duck virus hepatitis)
1.原因
ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、アビヘパトウイルス属(Avihepatovirus)に属するあひるA型肝炎ウイルスおよびアストロウイルス科(Astroviridae)、アバストロウイルス属(Avastrovirus)に属するあひるアストロウイルス。あひるA型肝炎ウイルスはあひるウイルス性肝炎ウイルス1型、あひるアストロウイルスはあひるウイルス性肝炎ウイルス2型、3型。3型はピコルナウイルスとされてきたが、ゲノム配列からアストロウイルスに分類された。
2.疫学
1型はあひるを飼育している国で広く発生する。2型はイギリス、3型はアメリカ合衆国で確認されている。日本では1型が1962〜63年に発生したが、その後認められていない。4週齢未満のヒナのみが発症する。主に接触・経口感染で伝播する。
3.臨床症状
潜伏期は1日で感染後は甚急性経過を取り、3〜4日で死亡する場合が多い。症状としては、感染鳥は目を閉じ、うずくまったり、横たわり、痙攣のようにキックし、反り返り死亡する。致死率は1型の場合、1週齢未満で95%、1〜3週齢で50%程度であり、4〜5週齢では低くなる。2型では、ヒナの日齢により10〜50%であるが、発症すればたいてい死亡する。3型では、30%以下である。
4.病理学的変化
肉眼的には、肝臓腫大または斑状出血が観察される。組織学的には肝細胞の増殖、小葉間胆管上皮の増殖、出血、細胞浸潤など。
5.病原学的検査
臨床・疫学検査と、肝臓、血液などをアヒル卵に接種してウイルスを分離する。1型と2型は発育鶏卵でも分離できる。
6.抗体検査
経過が甚急性のため有効ではない。
7.予防・治療
ひなが感染することから孵化後の衛生管理が重要である。1型では弱毒生ワクチンや不活化ワクチンがあるが、日本では認可されていない。2型、3型にはワクチンはない。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)