あひるウイルス性腸炎(duck virus enteritis)
1.原因
ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae)、マルディウイルス属(Mardivirus)に属する。ゲノムは二本鎖DNAウイルス。エンベロープを持ち、血清学的には単一で株により病原性は異なる。
2.疫学
あひるウイルス性腸炎は、カモ科の鳥類(あひる、がちょうおよび白鳥)に広く伝染する急性感染症である。接触感染で伝播する。これまでわが国での発生報告はない。
3.臨床症状
あひるでの感染後3〜7日の潜伏期を経て、罹患鳥は元気・食欲不振、羽毛逆立ち、鼻汁漏出、水溶性下痢、運動失調等の症状を示し、1〜5日以内に死亡する。致死率は若齢ひなで高いが、成鳥でも死亡し、全体では5〜100%である。生き残った鳥は、持続感染鳥となり、湖沼を汚染し、そこが感染源となる。
4.病理学的変化
特徴的な肉眼病変は諸臓器の出血と腹腔内の血液貯留で示される血管障害である。食道から直腸に至る腸管の点状あるいは斑状出血や、肝臓の出血・壊死が特徴的である。腸管の病変はリンパ組織が発達した部分でみられる。
5.病原学的検査
臨床・疫学検査と、肉眼病変や核内封入体の検出から診断が可能であるが、確定診断には感受性1日齢あひるヒナあるいはあひる胚漿尿膜上接種でウイルスを分離する。
6.抗体検査
中和試験やELISA
7.予防・治療
外国では鶏胚馴化弱毒生ワクチンが使われている。
8.発生情報
9.参考情報
獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第4版(近代出版)、家禽疾病学第2版(鶏病研究会)、家畜伝染病ハンドブック(朝倉書店)
編集:動物衛生研究部門
(令和3年12月 更新)