ウマノアシガタ

学名:Ranunculus japonicus Thunb. ex Murray英名:buttercup

日本全土に分布する高さ30-60cmの多年草で、主に平地の日当たりのよい場所に生え、春に直径2cmほどの黄色い花を咲かせます。この黄色い花弁が光を浴びてキラキラ光るのは、花弁の下のデンプンを含む細胞層が光を反射するためです。和名ウマノアシガタは直径3-7cmの葉身が馬蹄形であることからつけられたようです。しかし実際の葉の形を見ると、正直なところ、そのようには見えません。また別名のキンポウゲは漢字で「金鳳花」と書き、この植物の八重咲き品種に付けられた名前です。日本のキンポウゲの仲間には、キツネノボタン R. silerifolius、ミヤマキンポウゲ R. acris subsp. novus など多数の自生種があります。

昔、北海道では多数の牛が中毒を起こしたようですが、最近は国内での中毒発生報告はほとんどありません。

 

 

キツネノボタン(九州沖縄農業研究センター(現 秋田県立大)森田弘彦氏提供)
キツネノボタン(栃木県、7月)

有毒成分

ウマノアシガタには配糖体ラヌンクリン(ranunculin)が含まれており、葉をすりつぶしたりすることにより加水分解され、プロトアネモニン(protoanemonin)を生じ、これがウマノアシガタの有毒成分と考えられています(2)。プロトアネモニンは淡黄色、油状で、揮発性が強く、皮膚や粘膜に対する刺激性の強い物質です。この刺激性は、プロトアネモニンが、皮膚や粘膜のスルフィド基と結合して起こると考えられています(4)。プロトアネモニンは乾燥や煮沸によって2分子が重合してアネモニン(anemonin)となりますが、この物質には揮発性や刺激性はありません。

プロトアネモニンは、キンポウゲ科の植物に広く分布しており、ウマノアシガタを含む Ranunculus 属をはじめとして、Anemone 属(イチリンソウやイチゲの仲間)、Clematis 属(ボタンヅル、その他園芸用クレマチス類)、Helleborus 属(クリスマスローズ類)などに含まれます。

キンポウゲ科の植物の毒性は、植物中プロトアネモニン量が多いほど強くなりますが、プロトアネモニン含量は、植物の種類や、成長過程によって大きなばらつきがあるようです。最も多くプロトアネモニンを含む植物は Ranunculus bulbosusHelleborus niger で、葉の湿重量に対してそれぞれ 0.78%, 0.58% 含まれてます(1,5)。

検査法

植物中プロトアネモニンの定量法として、高速液体クロマトグラフィーを用いた方法(1)が報告されています。

中毒症状

「家畜有毒植物学」によれば、皮膚および粘膜への刺激が強く、主症状は口内の腫脹、胃腸炎、疝痛、下痢などです。さらに重症の場合、黒色敗臭便あるいは血便を排泄し、嘔吐、神経症状、呼吸緩除、瞳孔散大を経て死に至ることもあります。かつて北海道では、草の少ない早春に放牧牛がかなり中毒を起こすことがかなりあったようで、上記の症状以外に、血尿や、苦みのある赤色乳の排出がみられと記載されています。

海外ではミヤマキンポウゲの基本亜種 (Ranunculus acris subsp. acris) を摂取した犬で強度の蕁麻疹が起こったと報告されています(5)。また、buttercup (Ranunculus bulbosus)が原因と疑われる牛の中毒例があり、肝毒性と二次的な光線過敏症が報告されていますが(3)、プロトアネモニンの肝毒性についての記載は他になく、今後の検討が必要と思われます。

病理所見

胃腸粘膜は腫脹して出血斑があり、腸内容には血液が混じります。また腎臓では出血性腎炎がみられます(家畜有毒植物学)。

文献

1) Bonora, A. et al. 1985. Separation and quantitation of protoanemonin in Ranunculacea by normal and reversed-phase HPLC. Planta. Med. 51:346-

2) Hill, R. and van Heyningen, R. 1951. Ranunculin: the precursor of the vesicant substanse of the buttercup. Biochem. J. 49: 332-335.

3) Kelch, W.J. et al. 1992. Suspected buttercup (Ranunculus bulbosus) toxicosis with secondary photosensitization in a Charolais heifer. Vet. Hum. Toxicol. 34:238-239.

4) Spoerke, D.G. 1990. Protoanemonin. In Toxicity of house plant. (CRC press) p37-39.

5) Winters, J.B. 1976. Severe urticarial reaction in a dog following ingestion of tall field buttercup. Vet. Med. Small. Anim. Clin. 71:307.

 

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最終更新日:2008.11.21 写真提供者情報の更新
        2018.2.8
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