ドクウツギ

学名:Coriaria japonica A. Gray

北海道・本州(近畿以北)の山地に自生する落葉低木で高さ1.5メートル位になります。花は4から5月に咲き、果実は初め赤く、後に黒紫色に熟します。ドクウツギ科の植物としては、日本にはドクウツギ1種のみしか存在しませんが、世界各地に多くの種が分布しています。別名ネズコロシあるいはイチベコロシといわれるように猛毒ですが、実が美しく、甘みもあるのでヒトが食用と間違える事故がおこります。第二次世界大戦前には小児の誤食による事故がヒトの全植物中毒の約10%を占めるほどでした(2) 。しかし家畜の中毒例の報告はほとんどありません。

海外でも、ドクウツギ属果実の誤食による中毒があるようですが、ニュージーランドでは、蜂蜜の汚染による中毒もあるそうです。ニュージーランドで自生しているCoriaria arborea(現地ではtutuと呼ばれている)の樹液を食べる昆虫(Scolypopa australis, passion vine hoppers)の分泌する甘露(ツチンを含んでいる)をミツバチが集め、これから出来た蜂蜜をヒトが食べると中毒を起こすことがあるそうです。

 


(札幌市、5月)

有毒成分

ドクウツギの有毒成分は、コリアミルチン(coriamyrtin)、ツチン(tutin)などモノテルペン骨格を有するラクトン化合物で、ピクロトキシン(picrotoxin、ツヅラフジ由来アルカロイド)の類縁体です。コリアミルチンはツチンよりも速やかに吸収され、速効性で、ツチンの4倍以上の毒性があります。したがって、ドクウツギ中毒の主体はコリアミルチンと考えられます。

コリアミルチンのLD50(マウス)は、1mg/kg 体重 、ウサギに対する致死量は、静脈内注射で 0.5 mg/kg 体重 、皮下注射で 3 mg/kg 体重とされています(家畜有毒植物学)。全草が有毒ですが、特に果実に有毒成分が多く含まれています。

コリアミルチンの作用機序はピクロトキシンと同様で、 神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)の作用と拮抗することにより症状を発現すると考えられます。すなわちGABA受容体の機能を遮断する結果、GABAによるシナプス前抑制が遮断され、興奮作用が発現します。作用部位もピクロトキシンと同じく中脳および延髄です(1,2)。

中毒症状

牛では採食後20-30分から中毒症状が現れます。まず泡沫を含んだ流涎があり、ついで強烈な痙攣症状を示し、苦悶、騒擾、てんかん様症状を呈します。このような発作を間欠的に繰り返した後、最後に痙攣が持続して死亡します(家畜有毒植物学)。

病理所見

口、鼻腔より少量の血液が混じった泡沫性粘液を多量に漏出し、皮膚血管は怒張して暗赤あるいは暗黒紫色の血液を満たします。腹腔内面のいたる所に溢血斑が散在し、胃腸粘膜では出血斑がみられます。気管支は暗紫紅色で出血を来たし、内腔は黄紫色の泡沫性液で充満しています。急性の死亡例では、肺の限局性鬱血を示し、その他の部分はむしろ貧血の状態にあります。気管支および気管支内の粘液の蓄積は著明ではありません。また、漿膜その他に充血ないし出血斑などは存在しません。これらの変化は痙攣のため虚脱に陥ったことによるもので、窒息死に基づくものではありません(家畜有毒植物学)。

文献

1) 柴田章次 1955。 Coriamyrtin の薬理知見補遺. 日薬理誌 51:229-235.

2) 藤井眞行 1999。 コリアミルチン, アニサチン, チクトキシン. 日本臨床 27:Pt2(別冊)領域別症候群シリーズ p682-684. 

 

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最終更新日:2012.12.21 ニュージーランド情報のリンク先を修正。また、樹液を食べる昆虫の種名を特定。
        2018.2.8
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