学名:Ginkgo biloba L.
英名:maidenhair tree, ginkgo
イチョウは、イチョウ科イチョウ属の落葉高木で、中国原産といわれています。中国名は、銀杏、公孫樹または鴨脚樹です。強健で成長が早く、街路樹、神社、寺院の境内等で広く栽培されています。また、人為的に移植されて世界中の温帯地域に分布しています。雌雄異株で雌株にだけ実がなります。種子植物であるイチョウにも精子があることを平瀬作五郎が1896年に世界で初めて発見したことでも有名です。イチョウの種子は核果様で熟すと外種皮は黄色になって悪臭を放ちます。内種皮を割って食用にされます(ギンナン)。
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(左:青森県、5月)
有毒成分
イチョウの種子(ギンナン)は4-O-メチルピリドキシン(4-O-methylpyridoxine、以前は4'-methoxypyridoxine)を含んでいます。4-O-メチルピリドキシンは抗ビタミンB6作用があり(1)、ビタミンB6欠乏によって抑制性の神経伝達物質であるGABAの生合成が阻害されて、けいれんが誘発されます(2-3)。銀杏を多食すると中毒になることは、古くは本草綱目(李時珍、1596)にも記載されているそうです。
イチョウの外種皮にはイチョウ酸(gonkgolic acid)、ビロボール(bilobol) などが含まれていて、悪臭の成分といわれていますが、これらの物質はウルシに含まれるウルシオール(urushiol)と構造が類似した化合物で(4)、皮膚に発疹を起こします(5)。
イチョウの葉に含まれているフラボノイド(ケルセチンなど)やテルペノイド(ギンコライドなど)を抽出したエキス(イチョウ葉エキス)には、脳血管循環の改善作用があるという報告があり、いわゆる健康食遺品に添加されて市販されています。しかし、イチョウの葉には接触性皮膚炎やアレルギーを起こすギンコール酸も含まれており、注意が必要です。イチョウ葉エキスの有効性および安全性については、(独)国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報を御覧ください。
中毒症状
ヒトで報告されているギンナン中毒の症状は、強直性けいれんおよび間代性けいれんで、意識を失うこともあるようです。小児の中毒事例が多く、比較的少量のギンナンでも中毒になるようです(6)。家畜では、ミニブタの中毒が発生しています。室内で飼われていたミニブタの子豚が、殻付きのギンナンを一掴みほど盗食し、けいれん症状を示しました。ビタミンB6の大量投与を指示したところ、大事に至らず回復したそうです。
文献