ソルガム・スーダングラスの病害 (2)


黄化萎縮病(ouka-ishuku-byo)  Crazy top
病原菌:Sclerophthora macrospora (Sacc.) Thirumalachar, C.G.Shaw et Narasimhan、卵菌
 植物体全体が萎縮し、異常な形態となる糸状菌病。5〜6月頃、降雨が多く圃場が冠水するような条件で良く発生する。6〜7葉期に発生すると葉は退色して波打ち、上位葉は捻れ・肥厚により巻いたようになり、葉の展開が阻害される。罹病葉の裏面には遊走子のうが白く粉を吹いたように観察される。病原菌は鞭毛菌類で、自由水があると遊走子のうが発芽して遊走子を出し、まん延する。


さび病(sabi-byo) Rust
病原菌:Puccinia purpurea Cooke、担子菌
 生育後期になると発生してくる、ソルガムでは唯一のさび病。紫色〜赤褐色、長さ1〜3mm、幅0.5〜2mm程度の小型の夏胞子堆を形成する。夏胞子堆は葉を突き抜けて生じ、多発すると葉全体が赤く焼けたように見える。秋にはやや細長い冬胞子堆ができ、冬胞子を形成する。比較的低温、多湿条件下で多発し、激発すると子実収量にもかなり影響する。トウモロコシさび病菌と同様に、カタバミ類が中間宿主とされるが、わが国ではまだ確認されていない。既存品種系統の抵抗性検定が行われている。


すす穂病(susuho-byo、病名未登録) Sooty head
病原菌:Bipolaris sp.、不完全菌
 穂に発生する糸状菌病。穂全体がかびて、黒褐色に変色する。わが国での発生の詳細は不明。


すす紋病(susumon-byo) Northern leaf blight
病原菌:Setosphaeria turcica (Luttrell) Leonard et Suggs (=Exserohilum turcicum (Pass.) Leonard et Suggs)、子のう菌
 冷涼地での代表的な斑点性の糸状菌病。開花期前後から発生し、周縁部紫褐色、中心部灰白色、長さ2〜10cm、幅0.5〜1cm程度の紡錘形病斑を形成する。後に病斑が融合し、葉全体が灰色から紫色に枯れ上がる。病斑は古くなると、胞子が形成されて中央部が黒くかび、これが飛散してまん延する。比較的低温条件で多発し、特に開花期前にまん延すると収量への影響が大きくなる。病原菌は寄生性が分化しており、一般的にはトウモロコシのすす紋病菌はソルガムを侵さない。


炭疽病(tanso-byo) Anthracnose
病原菌:Colletotrichum sublineolum P.Henn. apud. Kabat. et Bub.、不完全菌
 世界的な重要病害。日本では発生は少ないとされてきたが、近年気候温暖化に伴い発生が増加している。盛夏に小さな円形の斑点を葉に形成する。これが徐々に拡大して、周縁部赤褐色〜紫色、中央部黄褐色〜灰白色の病斑となり、相互に融合して不定形病斑となる。病斑が古くなると剛毛という菌組織が形成され、中央部が黒くかびてくる。剛毛付近には粘塊状の胞子が形成され、これが風雨で飛散してまん延する。病原菌はトウモロコシ、オーチャードグラス、ライグラスなどの炭疽病菌と同属だが、種が異なり、ソルガムにのみ病原性を示す。


粒斑病(tsubuhan-byo) Rough leaf spot
病原菌:Ascochyta sorghi Saccardo、不完全菌
 現在のところ栃木県でのみ発生するマイナーな糸状菌病。夏の終わりから発生し、病斑は濃赤色から紫色、円形から楕円形、長さ1ー3cm、幅0.5-1cmで、後に融合して不定形になる。特に葉の裏面の病斑上に固く突出した小黒点(柄子殻)を多数形成し、紙ヤスリのような触感がある。柄子殻内には多数の胞子があり、成熟するとこれが噴出し、風雨で飛散してまん延する。病原菌はアルファルファ茎枯病菌と近縁。


粒黒穂病(tsubu-kuroho-byo) Grain smut
病原菌:Sphacelotheca sorghi (Link) Clinton、担子菌
 穂に灰白色の殻に覆われた黒穂を形成する。黒穂部分の長さは1cmにも達し、種子が長く伸びたように見える。発生後期には殻が破れて、黒い黒穂胞子を露出する。病原菌は種子伝染し、植物の発芽と共に黒穂胞子が発芽し、幼植物の生長点に感染するとされる。


Sorghum downy mildew べと病
病原菌:Sclerospora sorghi (Kulk) Weston & Uppal、卵菌
 日本では未発生だが、世界では最も被害の大きい最重要病害。幼苗から全身感染し、下葉から黄化して激しく矮化する。後に葉に葉脈に沿った白いストライプができるのが特徴で、白化した部分から葉が裂けていく。冷涼多湿条件下では、葉の裏に白いかびを生じるが、これは分生胞子(遊走子のう)であり、飛散してまん延する。

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