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ササニシキの多系品種「東北IL3,4,5,8号」


[要約]
「東北IL3,4,5,8」は水稲「ササニシキ」にいもち病真性抵抗性遺伝子Pi-k, Pi-km,Pi-z,Pi-ztを戻し交配により組み込んだ同質遺伝子 系統である。これらは混合栽培することにより、いもち病の発生を抑制することが できる日本最初の多系品種である。
宮城県古川農業試験場・育種部・育種科
[連絡先] 0229-22-0148
[部会名] 水稲
[専門]  育種
[対象]  稲類
[分類]  普及

[背景・ねらい]
東北地方中南部で作付されてきた「ササニシキ」は、いもち病に弱く、多発年には 大被害を受け、生産が不安定である。「ササニシキ」の欠点であるいもち病抵抗性の 改良は、品質・食味の再現が非常に難しいので、いもち病真性抵抗性を導入した 同質遺伝子系統を育成し、多系品種として利用していもち病の発生を抑制しようと した。

[成果の内容・特徴]
  1. 水稲「ササニシキ」にいもち病真性抵抗性遺伝子Pi-k,Pi-km,Pi-z, Pi-ztを組み込んだ同質遺伝子系統を育成した。昭和52年に「ササニシキ」 を母に、上記の真性抵抗性遺伝子を持つ「曲系780」、「ツユアケ」、「フクニシキ」、 「76F6-88」を父として人工交配し、その後いもち病菌(レース003)の接種 により真性抵抗性の有無を確認しながら、「ササニシキ」に5〜6回戻し交配した。 昭和62年「東北IL3,4,5,8号」の地方系統名を付し、地域適応性を検討してきたもので、 平成6年でB6F12,B5F12, B6F12,B5F15になる。
  2. 「東北IL3,4,5,8号」の特性は、いもち病真性抵抗性以外は「ササニシキ」と同じ である(表1)。
  3. これらの同質遺伝子系統は、混合栽培によりいもち病の発生を抑制することができ、 農薬使用量の軽減が可能である(表2)。
  4. 本品種は日本で最初の多系品種である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 宮城県で「ササニシキ」の一部に代えて奨励品種に採用の予定であり、良質・ 良食味米の省農薬・安定生産が期待される。普及見込み面積は合わせて10,000ha である。
  2. いもち病圃場抵抗性は「ササニシキ」と同じやや弱であり、いもち病菌のレースの 変化をみながら混合する系統及び割合を決める必要があり、毎年全量種子更新する。
  3. 耐冷性は「ササニシキ」と同じやや弱であり、低温時には深水管理により保温に 努める。
  4. 耐倒伏性も「ササニシキ」と同じやや弱なので、多肥栽培は避ける。

[その他]
研究課題名:寒冷地中部向良質品種の育成
予算区分 :指定試験
研究期間 :平成5年
発表論文等: