研究所トップ研究成果情報平成7年度

モチ性小麦系統「もち盛系C-D1478」及び「もち盛系C-D1479」の育成


[要約]
「もち盛系C-D1478」及び「もち盛系C-D1479」は、3種のWxタンパク質の組成が異なる「関東107号」と「白火(Bai Huo)」を交配し、トウモロコシ法による半数体育種法で育成したモチ性小麦系統である。
東北農業試験場・作物開発部・麦育種研究室
[連絡先] 0196-43-3512
[部会名] 畑作物
[専門]  育種
[対象]  麦類
[分類]  研究

[背景・ねらい]
国内産小麦はオーストラリア産ASWに比べ製めん適性が劣ることが実需者から指摘されているため、製めん適性が画期的に優れた品種育成が望まれていた。製めん適性の中で特に重要なめんの粘弾性は、一般にアミロース含量が低いほど優れることが知られている。このため、アミロース合成に関わるWxタンパク質の研究が進められ、アミロースのないモチ性小麦の育成を可能にする交配母本の2品種が見いだされた。そこで、これら2品種間で交配を行い、トウモロコシ法による半数体育種法を利用して、短期間のうちに遺伝的に固定したモチ性小麦を育成する。

[成果の内容・特徴]
  1. 小麦「もち盛系C-D1478」及び「もち盛系C-D1479」は、Wx-A1、Wx-B1両タンパク質が欠失した「関東107号」を母、Wx-D1タンパク質が欠失した「白火(Bai Huo)」を父として交配し、それ以降トウモロコシ法による半数体育種法により固定を図り、交配から約2年という短期間で育成したモチ性系統である(図1、表1)
  2. 半数体倍加系統の胚乳のヨード・ヨードカリ液染色によるモチ性判定から、モチ性系統が選抜できる(図1、表1)。選抜したモチ性系統はWx-A1、Wx-B1及びWx-D1の全てのタンパク質が欠失している。
  3. モチ性系統はアミロースをほとんど含まない完全なモチ性を示し、次世代にもモチ性が遺伝する(表2)
  4. 「もち盛系C-D1478」は播性Vで粒質が硬質、「もち盛系C-D1479」は播性Uで粒質が軟質である。
  5. 両系統とも白ふ、有芒種で、穂発芽性は難である。稈長は「もち盛系C-D1479」は「関東107号」と同じやや短稈種であるが、「もち盛系C-D1478」は「関東107号」より長稈である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 交配母本や奨励品種決定調査用材料として活用する。
  2. めん、パン等の小麦粉製品の品質改善用研究材料として利用できる。
  3. 播性からみて耐寒雪性は不十分と考えられるので、寒冷地における栽培には注意を要する。

[その他]
研究課題名:小麦新品種の育成試験
予算区分 :経常
研究期間 :平成7年度(平成5年〜平成7年)
発表論文等:半数体育種法によるモチ性小麦の開発,
       育種学雑誌45巻別冊1,222,1995.