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キタカミコムギの蛋白含量増加のための追肥法


[要約]
生育診断に基づいて、各々窒素成分0.2kg/aの減数分裂期追肥、穂揃期追肥あるいは減数分裂期追肥+穂揃期追肥(計0.4kg/a)のいずれかを行うことにより、製粉歩留、粉色、検査等級を劣化させずに、キタカミコムギの蛋白含量を増加させることができる。
山形県立農業試験場・作物部
[連絡先] 0236-47-3500
[部会名] 畑作物
[専門]  栽培
[対象]  麦類
[分類]  指導

[背景・ねらい]
昭和50年代後半頃より、実需者から山形県産キタカミコムギが低蛋白であることが指導されてきた。このため、蛋白含量増加と増収効果が期待できる減数分裂期追肥を含む追肥体系を確立することが望まれていた。

[成果の内容・特徴]
  1. 窒素成分0.2kg/aの減数分裂期追肥・穂揃期追肥・減数分裂期+穂揃期追肥(各々窒素成分0.2kg/a計0.4kg/a)は、いずれの年次においても蛋白含量を増加させる。また、その施用により強倒伏が生じないかぎり、製粉歩留、粉色、検査等級は無追肥と同様である(表1、表2)
  2. これらの追肥により倒伏が中以上(0〜4表示で3以上)になると、検査等級や粉の明るさが低下するので、生育診断に基づく施用を行う(表2)
  3. これらの追肥の施用条件は次のとおりである。減数分裂期追肥あるいは穂揃期追肥それぞれ単用の施用条件は、減数分裂期の生育量33,000以下かつ葉色45以下である。減数分裂期追肥+穂揃期追肥の施用条件は、減数分裂期生育量31,000以下かつ葉色45以下である(表2)
  4. 追肥による蛋白含量増加程度は、減数分裂期追肥が0.5%程度、穂揃期追肥が0.8%程度、減数分裂期追肥+穂揃期追肥が1.5%程度である(表2)

[成果の活用面・留意点]
  1. これ以上の追肥量及び追肥回数は、粉色の低下及び検査等級の低下を生じさせるので、行わない。
  2. 黒ボク土壌では蛋白含量が高くなりやすいという知見があるため、これらの追肥は行わない。
  3. 減数分裂期は葉耳間長0cm以上の穂が全茎の50%程度になる時期で、出穂期8〜10日前頃である。
  4. 生育量は、草丈cm×茎数/uである。
  5. 葉色は、止葉の一枚下の葉の中肋を挟んだ、葉身中央部のSPAD値である。
  6. 適用地帯は最北地域を除く本県平坦部である。

[その他]
研究課題名:小麦の施肥体系が蛋白含量に及ぼす影響
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成2〜7年)
発表論文等:高取寛、斉藤敏一、深瀬靖、岡崎幸吉.1993.
       減数分裂期以降の追肥がキタカミコムギの製粉品質に及ぼす影響.
       第1報.蛋白含量と粉色.
        東北農業研究 46:117-118.
      高取寛、斉藤敏一、深瀬靖、武田公智.1994.
       減数分裂期以降の追肥がキタカミコムギの製粉品質に及ぼす影響.
       第2報.追肥時の生育量・葉色と蛋白含量.
        東北農業研究 47:139-140.