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セル成型トレイを用いたダイズシストセンチュウ抵抗性の簡易検定法


[要約]
ダイズシストセンチュウ汚染土壌を詰めたセルトレイで大豆を栽培すると、多くの感受性個体では播種後6〜7週間後にセル側面の根系に雌成虫が現れ、これら個体では土壌を取り除くことなく即座に抵抗性が検定できる。
東北農業試験場・作物開発部・大豆育種研究室
[連絡先] 0187-75-1043
[部会名] 畑作物
[専門]  育種
[対象]  豆類
[分類]  研究

[背景・ねらい]
ダイズシストセンチュウ(以下、センチュウと略す)抵抗性の付与を目的としてセンチュウ抵抗性育種が進められている。しかし、センチュウ抵抗性には複数の遺伝子が関与し、抵抗性個体の出現頻度が低いため、初期世代に大きな集団を養成する必要がある。また、抵抗性の判定には根部を堀り取り、土壌を取り除いて雌成虫の着生程度を調査する必要があり、多大の労力を要する。そこで、センチュウ抵抗性育種の効率化を図るため、セルトレイによる抵抗性の簡易検定法を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 本検定法では、育苗用セル成型トレイ(図1、外寸28cm×45cm、列数5×10穴、1穴の口径45mm×深さ55mm、角形成型)にセンチュウ汚染土壌を詰め、検定個体を1穴1粒播種し、センチュウの寄生に好適な温度条件(25℃前後)で栽培する。「Peking」系の高度抵抗性検定にはレース1、「下田不知」系の抵抗性検定にはレース3のセンチュウ汚染土壌を用いる。
  2. 播種後6〜7週間後に検定個体を抜き取り、根部の雌成虫の着生を調査する。このとき多くの感受性個体ではセル側面の根系に雌成虫が観察され、土壌を取り除くことなく即座に感受性が確認できる(表1、2)
  3. 個体選抜では、セルトレイによる検定で雌成虫の着生が認められなかった個体をセンチュウ汚染土壌を詰めたポットに移植し、粒肥大盛期に再度調査する。これにより選抜精度を高め、かつ次代の種子を確保できる。また、この方法によりセンチュウ汚染圃場での選抜に比較して精度の高い選抜が可能である(表2)

[成果の活用面・留意点]
  1. センチュウ抵抗性の系統検定および個体選抜を屋内で省力的に実施できる。
  2. センチュウ密度が低い汚染土壌でも検定は可能であるが、精度を高めるため密度の高い汚染土壌を用いることが望ましい。

[その他]
研究課題名:シストセンチュウ抵抗性系統の選抜法の開発
予算区分 :高品質輪作
研究期間 :平成7年度(平成4〜7年)