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新病害オウトウ芽枯病の発生確認


[要約]
オウトウ品種「佐藤錦」に授粉用品種を高接ぎした一部園地において、「佐藤錦」だけが発芽障害をおこす原因不明の被害が発生した。これまで本邦では報告のない接木伝染性病害であることが明らかになり、オウトウ芽枯病と呼ぶこととした。
山形県立園芸試験場・環境部
[連絡先] 0237-84-4125
[部会名] 果樹
[専門]  作物病害
[対象]  果樹類
[分類]  研究

[背景・ねらい]
「佐藤錦」に授粉用の品種を高接ぎした一部園地において、「佐藤錦」の芽だけが発芽しない原因不明の被害が平成5年以降発生し甚大な被害となっていることから、その原因を明らかにし生産安定に寄与する。

[成果の内容・特徴]
  1. 症状は、芽基部の維管束が褐変し不発芽あるいは発芽遅延となる。枝幹では皮層に筋状の褐変がみられる。葉では6月以降に約1cmの赤褐色から褐色の不整形斑点と黄色の斑点(モットル)がみられる(図1)
  2. 被害は「佐藤錦」でのみみられ、高接ぎした穂品種では見られず潜在感染する(表1)。また、接ぎ木1年目以降に葉の症状、2年目以降に発芽障害が発生する事例が多く、いったん被害が発生すると被害樹の回復は見込めない(表2)
  3. 本被害は、接ぎ木によって伝染する病害であることが明らかになった(表3)。これまで同様の病害は報告されておらず、芽が発芽せずにいずれ枯死することから、オウトウ芽枯病と呼ぶこととする。
  4. 葉の褐色不整形斑点と芽が枯死する点でオウトウ炭そ病と類似しているが、本病は葉の黄色斑点(モットル)を形成するが炭そ病では形成しない、前者は高接ぎによって「佐藤錦」でのみ病徴を現すが、後者は高接ぎや品種にかかわらず発病する点において異なる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 病原体が不明なため穂木の保毒検定法が確立していないこと、被害樹の回復処置法がないことから、当面高接ぎは行わない。
  2. 発生樹からの穂木の採取および譲渡は行わない。

[その他]
研究課題名:原因未詳病害虫の解明と制御技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成5年〜10年)
発表論文等:オウトウの接木伝染性病害,芽枯病(新称)について.
       日植病報,61巻6号637(講要).1995