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広食性蚕の全齢桑葉育における品種特性


[要約]
低コスト人工飼料育用に育成された広食性蚕を全齢にわたり桑葉育すると、桑葉育用の普通蚕品種に比べ、飼育経過がやや早く、単繭重、繭層重、繭糸量、繭糸長等、繭の計量形質が上回り、収繭量も多く、繭も大きいものが得られる。
福島県蚕業試験場・養蚕部
[連絡先] 0245-77-0055
[部会名] 蚕糸
[専門]  飼育管理
[対象]  蚕
[分類]  研究

[背景・ねらい]
養蚕従事者の高齢化や繭価格の低迷により、養蚕農家数や繭生産量が減少しつつある。このため養蚕の省力化や低コスト化をめざし、経営改善を図ってきたが、人件費の高騰等により低コスト化も限度に近付いている。これからは付加価値の高い繭の生産に基本をおいた養蚕業に再構築する必要があると考えられる。このため低コスト人工飼料育用に育成された広食性蚕を用いて、特徴ある繭生産が可能かどうか、全齢桑葉育を行い、生産された繭の品質特徴を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. 春蚕期での広食性蚕の飼育経過は、普通品種に比べ5齢起蚕までは約1日早く経過し、その後遅延し、全齢でやや早くなる。また生産された繭の単繭重、繭層重、繭糸量、繭糸長は普通蚕品種を上回り、収繭量も多く繭も大きくなる(表1)
  2. 初秋蚕期での、広食性蚕の飼育経過は普通品種と同じであるが、計量形質すべて普通品種より下回る。晩秋蚕期はやや早く、計量形質は単繭重、繭層重で高い値を示す(表2、表3)
  3. 全蚕期を通じて広食性蚕の繭糸繊度は、普通品種より太くなる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 広食性蚕の全齢桑葉育は、初秋蚕期のような高温時には普通品種と比べ、生産された繭の計量形質はやや低くなる。
  2. 春蚕期や晩秋蚕期での広食性蚕の全齢桑葉育は、単繭重や、繭糸量が重く、また繭糸長も長いなど総体的に優れている。
  3. 広食性蚕に適した飼育管理、防疫管理、蔟中管理等の技術管理を徹底すると、普通蚕品種と差別化した特徴ある繭生産も期待できる。

[その他]
研究課題名:高付加価値繭生産技術の確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度(平成6〜10年)
発表論文等:広食性蚕の全齢桑葉育における計量形質,
       東北蚕糸研報,20号,1995