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味覚センサによる清酒の酒質評価法


[要約]
清酒の酒質評価を味覚センサを用いて予測するシステムを開発した。同システムはきき酒による一般酒(上撰酒)の鑑評値と熟度の判別、化学分析から求められる味の濃淡度を予測することができ、酒質に応じた酒造管理、品質の安定化に寄与できる。
岩手県工業技術センター・醸造技術部
[連絡先] 0196-35-1115
[部会名] 流通・加工
[専門]  
[対象]  
[分類]  研究

[背景・ねらい]
近年、人間の感覚と同等の機能を有するセンサの開発が急速に進展している。アンリツ(株)製の味認識装置SA401(写真)は、味らい細胞の機能を模倣した脂質膜センサを備え、センサ出力値をパターン認識し味を識別する機能がある。本研究はこの装置を用いて清酒の酒質評価を予測するシステムの開発を狙いとした。

[成果の内容・特徴]
  1. 一般酒のきき酒による鑑評値を目的変数、使用した12種類の味覚センサ出力値を説明変数とする変数選択重回帰分析を行った。その結果、有効なセンサ4種で推定した値はきき酒による鑑評値と高い相関が認められ、センサによる一般酒の鑑評値の予測が可能であった(図1)
  2. 一般酒の熟成度合いを重判別分析によって3段階(若い、適、過熟)に判別させると、正判別率は76%と高く熟成度においても予測が可能であった(表1)
  3. 化学分析値から計算され人間の官能評価に合うとされている濃淡度との相関も高く、これまでの化学分析による濃淡度をセンサで直接予測することができた(図2)

[成果の活用面・留意点]
本システムは一般酒製造の各工程において酒質のチェックに応用でき、酒質に応じた酒造管理や品質の安定化に役立つものと思われる。

[その他]
研究課題名:味覚センサによる酒造の酒質評価
予算区分 :県単
研究期間 :平成7年度
発表論文等:味覚センサによる酒質評価,
       岩手県工業技術センター研究報告No.2,1995
      味覚センサによる清酒鑑評値の推定,日本農芸化学学会講演,1995
      味覚センサによる清酒の酒質判定技術の開発,日本醸造学会講演,1995
      同上,人間工学関連シンポジウム講演,1995
      同上,生命工学連合部会秋期東北・北海道地方部会講演,1995