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水稲の登熟中期における冠水が収量・品質に及ぼす影響


[要約]
水稲の登熟中期における水害で、 冠水72時間までは収量に対する影響が軽微であった。また、 玄米の外観品質は冠水時間が長くなるほど大きく低下し、 品質低下の内容は主として心白・乳白等の白未熟であり、 特に冠水時間が48時間以上では被害が顕著であった。
岩手県農業研究センター・農産部・水田作研究室
[連絡先] 0197-68-4412
[部会名] 水稲
[専門]  農業気象
[対象]  稲類
[分類]  行政

[背景・ねらい]
平成10年8月末、東北地方に停滞した前線の活発化により大雨となり、 8月27日から31日までに盛岡176mm、北上248mm、一関218mmの降水量を記録し、 岩手県南部を中心に水稲、畑作物等に、冠水や泥付着、 土砂流入等による被害が発生した。今回の冠水時期は水稲の登熟中期 (出穂後約20〜25日)に当たり、この時期の冠水が水稲の収量・ 品質に及ぼす影響を明らかにするため、県南部の水田について調査を実施した。

[成果の内容・特徴]
  1. 玄米収量について
    1. 収量構成要素のうち玄米千粒重と登熟歩合は、 冠水時間が長くなるとわずかに低下する傾向が見られた。ただし、 84時間冠水した水田では、登熟歩合が73.4%と大きく低下した (表1)
    2. この時期の冠水による収量への影響は、 収量指数(無冠水圃場との比較)から見ても冠水72時間までは軽微であった (図1、2)
  2. 玄米品質について
    1. 検査等級は、冠水時間が長くなるほど明らかに低下し、 特に冠水時間が48時間以上では3等や規格外格付となった。一方、 冠水時間が24時間までは1〜2等であり、無冠水と同等であった (表2)
    2. 冠水時間の長期化に伴い、心白、乳白、腹白、背白、 基部未熟等の白未熟粒が増加し、 冠水が48時間を超えると整粒歩合は著しく低下した。また、 奇形粒も冠水により増加する傾向が見られた (表2)
    3. 冠水時間が同等でも、 茎葉や籾への泥の付着程度が多いと品質低下の度合いが大きくなった (表2)
    4. 玄米の粒厚分布は、冠水時間が48時間以上になると、 粒厚1.9mm以上の割合が無冠水と比較して5〜10%減少し、 粒厚が薄くなる傾向が見られた (表3)

[成果の活用面・留意点]
  1. 冠水と収量との関係は倒伏を伴わない場合の調査である。
  2. 無冠水ほ場であっても浸水を伴った場合、 玄米光沢の低下等品質が低下する事例が報告されている。
  3. 冠水期間における北上川(一関狐禅寺)の水温は、概ね19度C前後であった。

[その他]
研究課題名:水稲作況調査と作柄成立要因の解析
予算区分 :県単
研究期間 :平成10年度
発表論文等:なし