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リンゴ「北斗」における心かび病の感染生態
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[要約]
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リンゴ心かび病菌は落花20日後頃からがく筒へ感染し、
落花30日後頃には子室へ感染し始める。
心腐れ症状には複数のFusarium属菌が関与し、その中には少なくとも、
F.oxysporum、 F.avenaceum 及び F.acuminatumの3種が含まれている。
青森県りんご試験場・病虫肥料部
[連絡先] 0172-52-2331
[部会名] 果樹
[専門] 作物病害
[対象] 果樹類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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リンゴ心かび病は果実内部に糸状菌が繁殖する病害であり発病部位に
よって2つの症状を呈する。すなわち、
子室内部のみ発病した場合を子室かび症状、腐敗が果肉部に進行したものを
心腐れ症状と呼び、後者はさらに腐敗状況によって乾腐型と軟腐型に分類される。
発生量は子室かび症状によるものが多いが、被害程度は心腐れ症状の方が大きい。
本病は主に果実のがく筒が開孔するという形態的特徴に起因し、
関与する病原菌の種類も多様であるため有効な防除方法は見いだされていない。
そこで本病の感染生態を明らかにするために病原菌の果実内部への感染時期を
検討し、心腐れ症状の主要病原菌を同定する。
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[成果の内容・特徴]
- リンゴ「北斗」における心かび病菌の果実への感染時期(
図1、
図2)。
- 開花期〜落花10日後頃:がく片、花弁、雌ずい、雄ずいに定着し始める。
- 落花20後頃:がく筒へ感染し始める。
- 落花30日後頃:がく筒感染率が増加し、子室へ感染し始める。
- 落花50日後頃:子室感染率が増加し、心かび病が発生し始める。
- 心腐れ症状の主要病原菌
- 乾腐型の主要病原菌はAlternaria属菌とFusarium属菌である
(図3)。
- 軟腐型の主要病原菌はFusarium属菌である
(図4)。
- 心腐れ症状のFusarium属菌にはF.oxysporum、F.avenaceum 及び
F.acuminatumの3種の他にも数種が含まれる。
- 各Fusarium属菌の分離比率には年次変動や園地間差異があり、
一定の傾向はみられない。
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[成果の活用面・留意点]
- 殺菌剤散布によるリンゴ心かび病の防除重点時期は開花期〜落花10日後頃と
考えられるが、多種類の糸状菌が関与しているので、
十分な防除効果を得るにはスペクトラムの広い殺菌剤を検索する必要がある。
- 子室かび症状の主要病原菌はAlternaria属菌とFusarium属菌である。
[その他]
研究課題名:リンゴ心かび病及び果実腐敗の生態解明と防除法の確立
予算区分 :県単
研究期間 :平成10年度(平成8〜12年)
発表論文等:リンゴ北斗における心かび病菌の果実侵入時期
日植病報 62(6) : 602.1996
リンゴ心かび病の心腐れ症状から分離される糸状菌とその病原性
日植病報 64(4) : 430.1998