研究所トップ研究成果情報平成13年度

わい性台リンゴ「ふじ」幼木の生育に対する土壌可給態窒素の関係


[要約]

 同じ気象条件の地域内で同一施肥条件下では、わい性台リンゴ「ふじ」幼木期の新梢伸長等樹体生育量と土壌可給態窒素量との間に正の相関が認められた。可給態窒素量は、施肥窒素量決定の指標として有効である。

[キーワード]

わい性台木、リンゴ、生育量、土壌肥沃度、可給態窒素

[担当]秋田果試・環境部・土壌肥料担当、栽培部・栽培担当、鹿角分場
[連絡先]0182-25-4224、0186-25-3231
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・参考


[背景・ねらい]

 たい肥等有機物を利用した土壌改良や窒素肥料の施肥に際しては、環境負荷に配慮した窒素成分の投入によって安定生産を可能にする効率的な土壌管理を実施する必要がある。そのためには土壌診断をもとに窒素肥沃度を診断し適切な施用量を算定することが求められるが、現在のところリンゴ栽培園の土壌窒素に関する診断基準は設定されていない。
 そこで秋田県内8か所のJM7とM.26わい性台「ふじ」を植裁した園地を対象に、土壌窒素の指標として可給態窒素量(30℃28日間培養による窒素無機化量)を取り上げ、樹齢3〜5年生時の新梢伸長等樹体生育との関係から施肥窒素量決定の診断指標としての有効性を検討する。

[成果の内容・特徴]

1.

調査は県北部2園(A、B園:多腐植質黒ボク土)、県南沿岸部1園(C園:淡色黒ボク土)、県南内陸部5園(D園:腐植質黒ボク土、E園:低地造成土、F、G園:グライ土、H園:灰色低地土)の8園で実施した。JM7、M. 26台「ふじ」とも1998年4月から1999年4月までの間に定植し、1999年の樹齢3年生時から5年生までは全園地とも施肥条件はN6kg/10aとし、その他管理についても同一条件で実施した。

2.

樹齢3年生及び4年生2か年合計の新梢伸長量(5cm以上のすべての新梢)には、台木間で有意差はなかったが、園地間で有意差が認められた。また、樹齢5年生(11月上旬)の樹高、幹周、側枝数にも同様の傾向が認められた(表1)。

3.

樹齢3年生時の4月下旬に採取した各園地の樹間下土壌の養分含量は、可給態窒素が0.9〜6.2mgN/100g、有効態リン酸が8.2〜35.8mgP2O5/100g、交換性カリが0.8〜2.2me/100g、交換性カルシウムが5.9〜24.5me/100g、交換性マグネシウムが2.7〜11.4me/100gの範囲であった(表2)。

4.

可給態窒素量と樹齢3、4年生2か年合計の新梢伸長量との間の単相関係数rは、県北部0.769、県南部0.732**となり、県南部では有意な相関が認められた(図1)。

5.

県南部の園地では可給態窒素量と樹齢5年生の樹高、幹周、樹幅、側枝数との間に有意な正の相関が認められた。有効態リン酸、交換性カリ、カルシウム、マグネシウムの含量との間では有意な相関を示すものはなかった(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1.

30℃28日間培養後の窒素無機化量を測定する可給態窒素量は、幼木期の樹体生育量と関係することから、わい性台「ふじ」園の施肥窒素量を決定する際の指標として有効と考えられる。

2.

可給態窒素量と樹体生育量の関係は地域によって異なることが考えられ、基準値を設定する場合には適用地域について気象、土壌条件を別途検討する必要がある。

3.

可給態窒素量の測定には28日間の培養期間を要するが、より短時間に評価する方法としてクロロホルム薫蒸抽出法によるバイオマス窒素量や硫酸カリウム抽出法による有機態窒素量の測定値から推定する方法が利用できる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

リンゴ新わい性台樹の早期成園化・安定生産のための施肥・土壌管理基準の設定

予算区分:

県単

研究期間:

1997〜2001年度

研究担当者:

佐藤善政、佐々木美佐子、船山瑞樹、森田 泉、丹波 仁

発表論文等:

成果情報に戻る部会別Indexに戻る