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モモ「あかつき」の発育速度モデルによる硬核期および収穫期の予測


[要約]

 モモ「あかつき」の硬核期、収穫期と気温との関係から発育速度モデルを作成した。このモデルにより、生育期の気温データから硬核期・収穫期を高い精度でリアルタイムに予測することが可能となった。

[キーワード]

果樹、モモ、発育速度(DVR)モデル、予測、気温、硬核期、収穫期

[担当]福島果樹試・栽培部・栽培研
[連絡先]024-542-4191
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]

 モモ栽培において収穫期等の発育ステージを予測することは、栽培管理及び販売対策の面で極めて重要である。一方、モモの果実は硬核期頃までの幼果期は気温に敏感に反応し、それが果実の成熟日数にも影響することが報告されている。そこで、モモの硬核期を特定することによりモモの発育と気温との関係を明らかにし、果実の成熟日数との関連性を含めてモモの果実発育をモデル(発育速度:DVR)化する。さらに、DVRモデルによる硬核期・収穫期予測システムを開発する。

[成果の内容・特徴]

1.

1989〜2000年にかけてモモ「あかつき」の幼果の内果皮をウイスナー試薬により染色し、その染色程度により硬核期を指数化(1:核頂部付近が僅かに染色→硬核期開始、2:核周囲が淡いピンク色に染色、3:核周囲がピンク色に染色、4:核周囲が赤紫色に染色→硬核期終了)した。1989〜2000年の硬核化は、満開後46〜57日頃(12年平均:満開後52日)に開始し、年次変動が大きい事が認められた。(図1

2.

硬核期のデータと当該年の気温データ(最高気温、最低気温)および発育データ(満開日、収穫開始日、収穫盛期日)によりDVRモデルを作成し、その精度について検証した。モデルは今回得られた硬核期のデータを基に、満開日から硬核期開始日までをDVR1、硬核化開始日から収穫盛り日までをDVR2として、各期間の時別気温(最高・最低気温からsin曲線により推定)との関係を指数関数曲線を想定してモデル化した。係数は実測日と計算日の推定誤差(RMSE)が最小となる値とした。

3.

DVR1は指数曲線の変化が大きく、気温に対する感応性が高い事が伺われた。このことから、モモ「あかつき」における硬核期までの果実発育は気温の影響が大きい事が確認された。一方、DVR2は変化量が小さく、直線的なモデルとなった。(図2

4.

モデルの精度は、DVR1は推定誤差で1.2日、最大誤差で3日、DVR2では、推定誤差で1.2〜1.3日、最大誤差で3日程度であった。(表1

5.

実際の予測は、予測日までは実測の気温(時別気温推定値)を各モデルのtに代入して得られたDVR値、実測日以降は日ごとのDVRの平年値を積算し、その積算値が発育指数(硬核期DVI1=1、収穫開始:DVI2=1)に達する日を予測日とした。

6.

今回作成したDVRモデルの活用により、モモ「あかつき」の硬核期・収穫期予測システムを開発する事ができた。年次変動の大きい硬核期、収穫期の予測は、従来積算気温による手法がとられてきたが、今回作成したDVRモデルを利用することによって予測の精度が向上し、かつリアルタイムでの予測が可能となった。

[成果の活用面・留意点]

1.

モモの硬核期・収穫期を、早期かつリアルタイムで予測情報の提供が可能となり、県内のモモ栽培において摘果、防除等の栽培管理はもとより、出荷計画等販売面でも円滑な運営が期待できる。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

農業技術情報システムを利用した生育予測技術の確立

予算区分:

県単

研究期間:

1996〜2003年度

研究担当者:

宗形隆、志村浩雄、渡邉栄子、増子俊明、阿部薫、高野靖洋、瀧田誠一郎、阿部和博

発表論文等: 1)志村ら(2001)園芸学会雑誌 第70巻(別冊2):222

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