研究所トップ研究成果情報平成13年度

有効殺菌剤の選抜によるモモ殺菌剤散布回数の削減


[要約]

 モモの主要病害(黒星病、灰星病、ホモプシス腐敗病)に対して防除効果の高い殺菌剤を選抜し、それらの殺菌剤を使用した散布回数削減防除体系を確立した。「あかつき」等の早生・中生種を対象品種として、現行の体系より散布回数を2回削減できる。

[キーワード]

モモ、殺菌剤散布回数削減、黒星病、灰星病、ホモプシス腐敗病

[担当]福島果樹試・病理昆虫部・病害研究室
[連絡先]024-542-4191
[区分]東北農業・果樹
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]

 福島県の現行のモモ病害虫防除基準では、「あかつき」を対象品種として複合交信攪乱剤を使用した場合、殺虫剤散布回数は慣行の10回に対し7回程度まで削減されている。一方、病害防除においては散布回数が9回となっているため、殺菌剤の散布回数を削減することがモモの減農薬を進める上で重要である。そこで、モモの主要病害に対して防除効果の高い殺菌剤を選抜し、殺菌剤の散布回数を7回以下に削減するための試験を行った。

[成果の内容・特徴]

1.

薬剤選抜試験の結果、ベノミル水和剤2,000倍の黒星病に対する防除効果は高く、残効が長いことが確認された(表1)。また、ビテルタノール水和剤2,000倍の灰星病に対する効果は高く、15日経度の残効が期待される(図1)。イミノクタジン酢酸塩・チウラム水和剤1,500倍、イミノクタジンアルべシル酸塩水和剤1,000倍およびベノミル・TPN水和剤1,000倍は15日間隔の防除においても、灰星病およびホモプシス腐敗病に対する防除効果が高かった(表2)。

2.

各病害に効果の高かった殺菌剤を組み合わせた削減防除体系試験の結果、果樹試験場内ほ場、福島市および伊達郡の現地ほ場ともに、削減防除区は9回散布の慣行防除区とほぼ同等の防除効果が得られた。

3.

以上の結果から、現行の体系より殺菌剤散布回数を2回削減した防除体系を確立した。具体的には、発芽前の第1回目防除は現行どおり縮葉病防除剤を散布する。5月20日頃には黒星病防除としてべノミル水和剤2,000倍を散布するが、本病の耐性菌出現を防止するためジラム・チウラム水和剤800倍を加用する。また、ホモプシス腐敗病の主感染時期となる6月20日頃から7月20日頃までは、イミノクタジン酢酸塩・チウラム水和剤1,500倍、べノミル・TPN水和剤1,000倍およびイミノクタジンアルベシル酸塩水和剤1,000倍の順に15日間隔で散布するが、特にこの期間の散布間隔が長引かないように注意する。さらに、収穫直前の7月30日頃には、ビテルタノール水和剤2,000倍を散布して灰星病の果実感染を防止する(表3)。

[成果の活用面・留意点]

1.

散布回数を2回削減したことにより、生産者の薬剤散布労力が軽減され、薬剤散布労働費を含めた薬剤散布経費が10%程度削減される。

2.

殺菌剤削減防除体系は、普及段階にある複合交信攪乱剤を利用したモモ害虫防除体系と併せて使用することができる。その場合の総散布回数は従来の体系より2回少ない8回となるため、環境負荷を軽減したモモ生産が推進される。

3.

対象品種は「あかつき」等の8月上旬までに収穫される早生・中生種とし、対象地域は県内全域とするが、せん孔細菌病の発生が認められない園・地域を対象とする。

4.

5月20日頃から7月20日頃までの防除間隔は15日間を厳守する。特に、天気予報等により長雨が予想される場合は散布間隔を短くし、特別散布で対応する。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

農薬への依存度を軽減したモモの新防除体系確立試験

予算区分:

県単

研究期間:

1989〜2000年度

研究担当者:

菅野英二、佐々木正剛、勝又治男、伊藤恵造

発表論文等: 1)菅野英二ら(2001年)北日本病虫研報 52:120-122.
2)菅野英二ら(2001年)北日本病虫研報 52:123-125.

成果情報に戻る部会別Indexに戻る